研究課題
骨髄由来間葉系幹細胞培養上清を利用した組織再生に取り組んで,培養細胞はさまざまな刺激を加えることで骨形成・血管新生に関連する成長因子を多く産生することがわかってきた.本年度の研究目的は物理的,化学的刺激により細胞培養上清の骨形成・血管新生能がどう影響されるかを明らかにすることであった.細胞種はヒト骨髄由来間葉系幹細胞およびヒト歯根膜由来線維芽細胞とし,刺激は細胞培養システム中に加え,任意の条件を設定した.24 時間培養後の細胞および培養上清を回収し,骨形成・血管新生関連因子の発現を遺伝子,タンパクレベルで評価した.またヒト骨芽細胞・ヒト臍帯静脈内皮細胞を使用して上清の石灰化能・管腔形成能についても評価した.さらにマウスの頭蓋骨欠損モデルを用いてアテロコラーゲンスポンジを担体として上清を適用し一定期間後の骨形成・血管新生について組織学的,X線学的に評価した.その結果,いずれの細胞種でも刺激により骨形成・血管新生関連遺伝子の発現が上昇し,関連因子の含有量も増加しており,骨形成・血管新生能は向上していた.頭蓋骨欠損モデルではいずれの細胞種でも刺激により骨形成・血管新生が促進されることを確認した.刺激を加えることで,培養上清の骨形成・血管新生能が向上し,その投与により骨形成・血管新生が促進されることが示された.劣悪な培養環境にさらされた細胞は,生きのびようと反応し生成した物質を含んだ細胞外小胞を放出することを利用して,組織再生に適した合目的な細胞外小胞を調製することができると考える.この細胞外小胞を組織欠損部に適用することにより,動員した内在性の幹・前駆細胞を集積させて組織を再生させる方法を検討することが可能であり,生体内に潜在する組織再生能力を特別な装置なしで高め,引き出すことができるはずであり,本課題の最終目標は十分に実現し得ると確信する.
2: おおむね順調に進展している
得られた研究結果を学会で発表することができた.また論文にまとめ投稿中である.
培養環境を劣悪にすると,その下に置かれた細胞は,生きのびようと反応し生成した物質を含んだ細胞外小胞を放出する.これを検証し,組織再生に適した合目的な細胞外小胞を調製する.この細胞外小胞を組織欠損部に適用することにより,動員した内在性の幹・前駆細胞を集積させて組織を再生させる方法を検討する.大規模の組織再生には,血管網構築を先行させ,つぎに目的組織を形成させるのが合理的である.この流れは生体内ではカスケード的に制御されている.これを模倣し,目的別に最適化調製した細胞外小胞を適時適所に適用することが検討できる.本課題は骨を対象にし,カスケード的な組織再生を図り,顎骨再建までを目論む.いまでも骨延長法によれば移植なしで大規模な顎骨再建が可能である.生体内に潜在する組織再生能力を特別な装置なしで高め,引き出すことができるはずであり,本課題の最終目標は十分に実現し得ると考える.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 575 ページ: 28~35
10.1016/j.bbrc.2021.08.046
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 18778
10.1038/s41598-021-98254-8