研究実績の概要 |
口腔衛生と認知機能低下の長期的な関連を調査するための無作為化試験の実施可能性は低いが、観察データから因果関係を導き出すことは困難である。我々は,観察されない時変因子の交絡効果を排除するために,固定効果モデルを用いて,口腔状態不良と主観的認知愁訴(SCC)の関連を調査することを目的とした。2010年,2013年,2016年に実施されたJapan Gerontological Evaluation Study(JAGES)のデータを使用した。口腔状態の悪化がSCC発症に及ぼす影響について,固定効果モデルを用いてβ回帰係数と95%信頼区間[CI]を算出した。SCCの発症は、キホンチェックリスト-認知機能スコアを用いて評価した。口腔内の状態は、嚥下困難の自覚、咀嚼機能の低下、ドライマウス、歯の本数の4つの変数を用いた。結果としてベースライン時にSCCを発症していない13,594人(女性55.8%)を対象とした。平均年齢は、男性72.4歳(標準偏差[SD]、5.1)、女性72.4歳(SD、4.9)であった。6年間の追跡期間中に、男性の26.6%、女性の24.9%がSCCを発症した。SCCの発症確率は、嚥下障害(β = 0.088; 95% CI, 0.065-0.111 for men and β = 0.077; 95% CI, 0.057-0.097 for women)、咀嚼機能低下(β = 0.039; 95% CI, 0.021-0.099; 95% CI, 0.057-0.097 for women)を獲得すると著しく高くなることが明らかになった。 057(男性)、β=0.030(95%CI、0.013-0.046)、ドライマウス(β=0.026(95%CI、0.005-0.048)、β=0.064(95%CI、0.045-0.083)、歯の喪失(β=0.043(95%CI、0.001-0.085)/男性)、β=0.058(95%CI、0.015-0.102))であった。
結論 この結果は、将来の認知症リスクを高めるSCCの発症を予防するために、良好な口腔衛生を維持する必要があることを示唆している。
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