研究課題/領域番号 |
19H03861
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小坂 健 東北大学, 歯学研究科, 教授 (60300935)
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研究分担者 |
竹内 研時 名古屋大学, 医学系研究科, 客員研究者 (10712680)
小山 史穂子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 疫学統計部主査 (40779542)
相田 潤 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80463777)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 口腔疾患 / コホート研究 |
研究実績の概要 |
口腔の健康状態の悪化が認知症発症に影響する可能性が指摘されていたが、これまでそのメカニズムに関する人を対象とした研究はほとんどなかった。そこで人との交流などの社会的な要因や、野菜や果物摂取といった栄養に関する要因が、口腔の健康状態と認知 症発症の間のメカニズムになるか調べた。 本縦断研究では、日本老年学的評価研究機構のデータを用いた。35,744名が解析対象者(女性が54.0%)であり、平均年齢は男性が73.1(SD=5.5)歳、女性が73.2(SD=5.5)歳であった。ベースライン時点で、13,580人(38.0%)が20本以上の歯を有しており、1,776人(5.0%) が2013年から2016年の間に認知症を発症した。多変量解析の結果、歯の喪失が認知症発症に有意に関連していた(ハザード比=1.14 (95%信頼区間:1.01-1.28))。また、媒介変数による間接効果はハザード比=1.03 (95%信頼区間:1.02-1.04)であった。各変数の媒介割合は、体重減少、野菜や果物摂取、閉じこもり、交流人数の順に、男性では、6.35%、4.44%、.83%、13.79%、女性では、4.07%、8.45%、0.93%、4.00%であった。 すなわち、男性では特に友人・知人との交流人数、女性では特に野菜や果物摂取が、歯の本数と認知症発症の因果関係を仲立ちする役割を果たしていた。この結果は、歯の喪失と認知症発症との間に有意な関連が見られ、その関連を友人・知人との交流人数といった社会的な要因や、野菜や果物の摂取などの栄養に関する要因が部分的に説明することが分かった。特に男性では、友人・知人との交流人数が口腔と認知症との関係を13.79%、女性では野菜や果物摂取が8.45%説明し、大きな役割を果たしていた。歯をできるだけ残すことは、家族や友人との社会関係を維持することにもつながり、また良好な栄養状態を通じて、認知症発症予防に寄与している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東北メディカル・メガバンクのデータへのアクセスは制限があり、循環器病疾患に関わる解析には制限があるものの、口腔疾患と他の全身疾患との関わりについての解析は他のデータベースによる解析ができている。
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今後の研究の推進方策 |
JAGESコホートに加えて、医療費データなどを活用することで、口腔と全身疾患の解析が可能である。
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