研究課題/領域番号 |
19H03870
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
福間 真悟 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (60706703)
|
研究分担者 |
山田 ゆかり 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (00306846)
後藤 励 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (10411836)
田栗 正隆 横浜市立大学, データサイエンス学部, 教授 (20587589)
三枝 祐輔 横浜市立大学, 医学部, 助教 (30806469)
三角 俊裕 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 助教 (40817300)
池之上 辰義 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (70761443)
河本 大知 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (30870076)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 疫学 / ラーニングヘルスシステム / 行動デザイン / 予防と医療 / データサイエンス |
研究実績の概要 |
本研究では、全国規模保険者の大規模ヘルスデータを活用し、慢性腎臓病の重症化予防における課題を明らかにし、課題を解決するための介入を設計・実装・評価する。データから課題を抽出するフェーズ(data to knowledge: D2K)、課題解決のための介入を実装するフェーズ(knowledge to performance: K2P)、介入を評価し新たなデータを取得するフェーズ(performance to data: P2D)を循環するLearning Health Systemを構築することで、様々なレベルでの保険者、医療者、患者の行動変容を促し、慢性腎臓病の社会課題を解決していく。 本研究では、健診データと医療レセプトを基盤として、保健事業と連携した次世代型保険者データベースを整備した。保険者データベースの分析によって、生活指導介入の効果検証、慢性腎臓病重症化につながるリスク因子の同定、重症化リスクの予測、慢性腎臓病スクリーニング後の受療行動の分析、慢性腎臓病による社会負担の推計を行った。さらに、慢性腎臓病重症化リスクが高い患者に対して、適切な受療行動への行動変容を達成するための行動経済学的介入(ナッジ・アプローチ)を設計・実装した。 介入評価の結果に基づく、新たな介入対象者の抽出や、対象者特性に応じた介入方法の改善を行い、Learning Health Systemの循環を回すことを実践している。さらに、Learning Health Systemに関わる保険者、大学、企業のコミュニティ構築を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保険者データベースの分析による慢性腎臓病重症化予防の課題抽出と課題解決のための介入設計を行い、慢性腎臓病重症化予防におけるLearning Health Systemのモデルを提示してきた。 【慢性腎臓病の未診断・未受診とその影響】腎機能のスクリーニングを受けた約7.1万人の中高年世代を分析した。健診で指摘された慢性腎臓病は5.7%(5.2%が未診断、0.5%が診断済み)であった。操作変数法による分析結果にて、未受診は16.3%の腎機能低下リスク増加と関連していた。 【BMI変化と腎機能低下の関連】BMIと腎機能のスクリーニングを受けた中高年世代の健診データ約24.5万人年を分析した。BMI変化と腎機能低下にはU字型の関連を認めた。 【高血圧の未受診者の課題】高血圧治療歴が無く、新たに高血圧スクリーニングを受けた中高年世代約15.4万人を分析した。スクリーニング後1年間で高血圧治療を開始した者は1度、2-3度高血圧で、それぞれ、15.9%、36.3%のみであった。傾向スコアマッチングによる分析結果にて、スクリーニング後に医療管理を受けた集団の方が血圧管理良好であった。 【行動経済学的ナッジアプローチによる受療行動への介入実験】慢性腎臓病の未受診者が適切な受療行動を行えるように行動経済学的ナッジアプローチを用いた受診勧奨介入を設計した。保健事業と連携したリアルワールドでの介入評価を行うRCT in health systemを実施した。慢性腎臓病のスクリーニングを受けた約4500名をナッジ群、通常勧奨群、比較対照群の3群にランダム割り付けして受療行動や健康アウトカムに対する影響を検証する。 【生活指導介入による健康アウトカム改善効果】一般健診を受けた中高年世代約7.5万人を分析した。回帰不連続デザインを用いて生活指導介入の因果効果を推定した。生活指導介入の割付効果は軽度の減量を認めたが、血圧、血糖、脂質等の心血管リスク因子に対する改善効果は認めなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
Learning Health Systemのコンセプトにて、保険者データベースからのエビデンス創出とエビデンスに基づく介入設計を進めている。大規模ヘルスデータから得られるエビデンスを保健・医療の現場に実装するためには、疫学研究と医療・保健現場でのプラクティスの連携が重要であると考えている。本研究を通して構築された大学、保険者、企業の連携体制は、研究の推進と研究成果の還元において重要な役割を持つ。 令和3年度には、令和2年度までに得られた研究成果と介入計画を基に、エビデンスの実装を推進する。
|