研究課題/領域番号 |
19H03873
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塚原 高広 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 客員共同研究員 (90328378)
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研究分担者 |
後藤 励 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (10411836)
古澤 拓郎 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (50422457)
新本 万里子 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 外来研究員 (60634219)
夏原 和美 東邦大学, 看護学部, 教授 (00345050)
田所 聖志 秋田大学, 国際資源学研究科, 准教授 (80440204)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 医療政策 / 医療経済学 / 医療人類学 / 医療サービス / パプアニューギニア / ユニバーサルヘルスカバレッジ |
研究実績の概要 |
パプアニューギニアは、人口、面積、GDPともに太平洋開発途上国の中では突出しているが、2015年の5歳未満小児死亡率は56、妊産婦死亡率は215と健康指標は劣悪である。また、小児保健サービス、母子保健サービスに課題を抱えるのみならず、非感染性疾患への医療サービス拡充が急務である。当該年度においては、人類学調査により一般住民・患者・医療従事者が求めている医療サービスの質を「概念」化すること、医学調査により住民対象の健康調査を行い地域の疾病構造を把握することを目標とした。 まず、現地共同研究機関であるディバインワード大学とともに研究計画を策定し、ディバインワード大学倫理委員会、東京女子医科大学倫理委員会、およびパプアニューギニア保健省医学研究審査委員会による研究倫理審査の承認を受けた。また、パプアニューギニア出入国管理局より調査ビザを取得した。現地調査は2019年7-10月に実施した。 人類学調査では、近代的・伝統的医療サービスおよび家庭内治療の知識・認識・経験についての語りを収集し、住民の健康観や病気観について考察した。とくに、出産における医療サービス利用と、すでに導入されている助産介助ボランティアサービスの利用について詳細な情報収集を行い、これらの利用に影響を与える要因について分析を行った。さらに、パプアニューギニアエンガ州における助産介助ボランティアサービスの導入プロジェクトを視察し、情報交換を行った。 医学調査については、母子を対象とした健康調査をパプアニューギニア東セピック州ウェワク郡の農村部で行った。健康調査の内容は、身体計測、血圧測定、マラリア感染調査、24時間思い出し法による栄養調査である。また、離乳期の乳児を対象として直接観察による連続3日間の食物秤量調査も行った。さらに、調査地域内の医療施設を訪問し、提供されている医療サービスについての情報を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初予期していなかった新型コロナウイルス感染症のパンデミックのため、2020年1月以降、海外調査が実施できない状況が続いている。そのため、先行研究の収集、本研究以前に収集したデータの分析、2019年度に行った人類学調査、医学調査で得られたデータの分析を行い、成果を報告することに努めた。調査による新たな情報収集ができないため、研究開始から3年が経過した時点で、本研究の柱である学際的融合研究に到達していない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、医学・人類学の手法を用いて収集した情報を融合し、経済学的分析により成果を創り出す学際的研究である。長期海外調査の実施が可能となる状況を待ちながら、経済学研究の準備を進めていく。今後、医学調査では、非感染性疾患に焦点を当てて情報収集を行い、利用者および医療従事者が求めている医療サービスの種類を絞り込む。人類学調査では、追加調査を実施することで利用者および医療従事者が求めている医療サービスの質を「概念」化することを目指す。さらに、これらの情報を融合して、住民の医療サービスに対する選好を評価できる経済学モデルを構築し、調査票を用いた離散選択実験を現地で実施する。
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