研究課題/領域番号 |
19H03876
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
茅野 功 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (70390242)
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研究分担者 |
宮崎 仁 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (20550396)
田中 直子 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (40435350)
望月 精一 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (60259596)
高山 綾 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (60413514)
井上 貴博 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70388940)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 医用テレメータ / 電磁干渉 / 相互変調 / 混信 |
研究実績の概要 |
2019年度は、病院内から放射される医療テレメータの電磁界強度を病院内および病院外に対して実測を行い、送信機の高さ、受信距離、構造物、季節、時間の観点から減衰度関数を導出し、受信可能距離条件を策定を実施した。 院内における電界の調査は、ゾーン管理の想定を超えた混信(相互変調)が生じる可能性を定量的に評価するため、129台の医用テレメータが稼働する川崎医科大学総合医療センター(岡山市)の東西棟それぞれ1~15階に対してスペクトラムアナライザを用い、各階に測定点を定め、周波数範囲は420~430および440~450 MHz、RBW30kHz、VBW10kHz、掃引時間0.1秒にて計48の測定点ごとに128回繰り返し尖頭値 [dBμV/m]を,夏季と冬季、10時および21時の2回それぞれ計測した。実験の結果,各チャネルが他階で混信の可能性となる電界強度(40 dBμV/m)以上で計測された割合は,32.7 %であった。また電界の減衰率は水平方向で18.5dBに対して鉛直方向で16.5dBとなり、現在の階毎に設定するチャネル管理方法の問題を露呈し、本測定結果に基づく新たなチャネル管理方法の提案した。この提案手法では相互変調の可能性となるチャネル数を61%減少でき、その有効性を検討した(論文投稿予定)。 また、院外への電磁界漏洩に対する実験的調査を実施した。上記病院内の15階、13階および11階の東窓側に設置した医用テレメータ送信機から放射された電磁界を、1300mの距離までのスポット調査を実施し、院外への電磁干渉の可能性を検討した。この結果、病院周辺に対する電磁界の構造物損失の程度,送受信機の高度差による損失変化と受信可能距離(121.6m)を定量的に示すことができた。(国際会議投稿中) 同時に、これらの電磁界環境をシミュレーションするためのモデリングに着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書での2019年度実施計画は、1)川崎医科大学総合医療センター電磁波放射実験、2)川崎医科大学附属病院電磁波放射実験、3)移動体実験における実験スケジュール調整、4)電磁界シミュレーションの情報収集となっていた。 このうち、1)についてはすべてスケジュール通りに進行した。川崎医科大学総合医療センターの病院内および病院外に対する電磁界測定も順調に終了した。実験データのまとめから電磁界の漏洩箇所の推定及び構造物損失の定量的検討まで実施できた。これらの研究成果をまとめ、院外への放射に対しては国際会議へ投稿中、また院内電磁環境と新たなチャネル管理方法の提案について論文執筆中である。さらに当初の想定に反して、院外の電磁界減衰が大きい方向があったため、その原因を詳細に調査するべく追加の実験を2020年度に実施予定である。2)については現在実験スケジュール調整まで完了たが、実施までは至らなかった。3)については2019年に川崎医科大学において新規ドクターカーが採択され、この機種についても2020年以降電磁界漏洩の実験ができるよう調整できた。4)については、情報収集のみならず実際にFDTD法に基づくシミュレータの選出とその解析方法まで決定するに至った。シミュレーション研究計画書では、2つの病院内外の電磁界測定実施後に電磁界シミュレーションに着手する予定であったが、想定以上に実測がスムーズに進行したため電磁界シミュレータの構築に着手した。このシミュレーション結果と実測結果を比較することで、想定よりも早期にシミュレーションの有効性を実証する予定である。 上記理由により、現在までの進捗はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の実施計画は、1)川崎医科大学附属病院における院内および院外への電磁界測定、2)ドクターカー・ドクターヘリの電磁界放射実験、3)シミュレータによる電磁界評価である。 1)に関して、同病院勤務である研究分担者高山・田中において実験日程の調整が完了している。これまでと同様の実測実験であるため経験を活かし、スムーズな実施をする予定である。2)に関して、川崎医科大学附属病院にてこれを扱う研究分担者井上との打ち合わせができており、またこれまでにも共同でドクターヘリにおける電磁界測定を実施した経験実験があることからドクターヘリ及びドクターカーの臨床使用時を除いたメンテナンス期間にて実施する目途が立っている。3)に関して、現在進行中の川崎医科大学総合医療センターのFDTD法に基づく電磁界シミュレーションを実行し、その経験を生かして川崎医科大学附属病院のシミュレーションに移行する予定である。異なる構造を持つ2つの病院の構築を完了し、実測とシミュレーションの比較からより混信を軽減するためのテレメータの配置方法について検討する予定である。また、同様にしてドクターヘリおよびドクターカーへのシミュレーションを実施する。 上記、3)のシミュレータを用いて、院内の医用テレメータから放射される電磁界の院外への漏洩を軽減させる送信機の配置方法を検討し、この結果に基づいた有用性について上記2病院にて実際に送信機を配置することで実施する予定である。その後改めて電磁界測定をすることで医用テレメータの信頼性を向上する手法の検討を実施する予定である。
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