研究課題/領域番号 |
19H03877
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
二宮 伸治 広島国際大学, 保健医療学部, 教授 (60237774)
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研究分担者 |
黒崎 達也 広島大学, 病院(医), 准教授 (40448270) [辞退]
コリー 紀代 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (80431310)
徳嶺 朝子 近畿大学, 生物理工学部, 講師 (90435058)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シミュレーション医療教育 / 呼吸療法 / ECMO / 仮想患者モデル / 穿刺トレーニング |
研究実績の概要 |
前年度構築した、心拍数変化を再現する仮想患者モジュールを用いた患者状態の再現環境の構築と教育適用の試行として、人工呼吸器およびECMOの臨床で要求される技術を習得できるソフトウェアシミュレータを新規開発した。努力呼吸の重要な指標とされるP0.1のモニタリングおよび、適切なカニューレの選択により送血圧、肺前圧を適正に保つ訓練を可能とした。臨床に即した血液ガスモニタリングを再現するため、模擬採血機能を付加した。P0.1の再現および自発呼吸と呼吸器モードの実装により、人工呼吸器の操作とECMOの操作が生体に及ぼす影響を再現可能となり、多人数教育ができるシミュレータとしての有用性が確認された。再循環による酸素化率の低下を再現する必要が発生したため、再灌流を実験的に評価することのできる右心房モジュールを開発した。このモジュールは、心臓モデルのSTLデータより右心房形状を抽出し、3Dプリンタで作成した金型に対して伸展性または強度に優れる2層のシリコンと繊維による血管層を形成することで右心房の形状と物性を再現することが可能となった。 表層臓器モジュールとして、気道管理、喀痰吸引時に必須の操作となる体位変換時の気道粘膜に対するカテーテル接触荷重を測定できる3次元気道荷重測定モジュールを新規開発した。本装置は、ポリウレタンゲルにより気道粘膜に近似した硬度を有する気道モデルを、トルソー内に格納できる寸法内に配置したロードセルにより固定し、3軸方向の荷重をリアルタイムモニタリングする。本装置を北海道大学で開発中の気管内吸引VRトレーニング装置に実装し、視線および手の移動量解析と相関させることで、その機能を検証することができた。また、表層臓器モジュールの応用として、患者頭部トルソーの表皮下に圧センサおよび加速度センサを埋設した皮膚感覚器モジュールを作成し、顎挙上法の評価に供することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1) 仮想患者モジュールを用いた心疾患症例再現環境の構築 COVID-19の蔓延によるECMO症例の急増と操作教育の需要に鑑み、仮想患者モジュールの適用対象を人工呼吸器およびECMOの臨床で要求される技術を習得できるシミュレータとした。P0.1の再現および自発呼吸と呼吸器モードの実装により、人工呼吸器の操作とECMOの操作が生体に及ぼす影響を再現可能となったが、緊急事態宣言の発令等により対面をベースとしたトレーニングによる教育効果の検証が困難であった。また、V-V ECMOにおけるカニュレーションと再還流現象の関連について、実験的に評価することのできる右心房モジュールを新規開発したが、定常流ポンプを用いた準定常状態の評価のみであるため、拍動流による評価が必要である。 2) 仮想患者モジュールを用いた呼吸不全症例再現環境の構築 気道管理、喀痰吸引時に必須の操作となる体位変換時の気道粘膜に対するカテーテル接触荷重を測定できる3次元気道荷重測定モジュールを新規開発し、北海道大学で開発中の気管内吸引VRトレーニング装置に実装し、その機能を確認できたが、COVID-19の蔓延による対面トレーニングの制限等から、学生および臨床経験者を対象とした人工呼吸管理トレーニングに本システムを本格的に応用し、有用性や課題について検討するには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)仮想患者モデルを内蔵した呼吸療法トレーニングシミュレータの継続開発と応用 本年度開発したECMOシミュレーション機能を内蔵した呼吸療法トレーニングシミュレータに、呼吸療法の管理に必要な人工呼吸器の主要なモードおよびトリガーコントロールなどの機能およびその点検機能を実装し、北海道大学で継続開発中のVRトレーニングシミュレータおよびプロジェクションマッピングによる表情再現シミュレータと連動した総合的な呼吸管理シミュレーショントレーニングシステムを構築する。 2)右心系循環臓器モジュールの構築とトレーニングシステムへの応用 右心系循環臓器モジュールとして、これまでは公開されている心臓形状を用いていたが、摘出心臓の形状であるため、カニューレ挿入の良否を評価するための形状の再現性がなかった。そこで、次年度はCT画像を再構成し、実物と近似した形状を用いて右心房モジュールを試作し、静脈への脱血カニューレの吸いつきも再現できる静脈モジュールを付加する。本モジュールを広島大学に設置されている拍動型人工心臓駆動装置と接続し、実際の循環系と同様の状態を再現して、シミュレーショントレーニングに応用するための再循環に関する情報を収集する。 3)気道臓器モジュールの再現性の向上とトレーニングシステムへの応用 本年度開発した気道荷重測定モジュールは、姿勢変化時に気道の自重の方向が変化するため測定の障害となる。これを補正するため、加速度・ジャイロセンサと連動させることにより姿勢変化時の影響を補正するシステムを構築する。また、気道形状が成人・小児で大きく異なり、さらに炎症などにより粘膜が肥厚する状態を再現するため、CT画像より気道形状を抽出し、その形状を再現したモデルを試作してトレーニング効果を検証する。
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