研究課題
環境性肺疾患は、大気中汚染物質の曝露により引き起こされる慢性炎症疾患であり、その患者数は世界的に年々増加している。しかしながら、その分子機構については未だに多くのことが分かっておらず、効果的な治療方法も確立されていない。これまでに我々は環境性無機粒子がスカベンジャー受容体(Scavenger Receptor: SR)ファミリー分子により認識されることを見出してきたため、本研究でSRファミリー分子に焦点を当てて肺胞マクロファージの環境微粒子応答の機能解析を行なっている。前年度までに我々はSRファミリー分子のSR-A1、SR-A6/MARCO、SR-B1、およびSR-B2/CD36に対する阻害モノクローナル抗体を樹立し、肺胞マクロファージサブセット解析を行なった。今年度は各サブセットのRNA-seq解析を行い、遺伝子発現プロファイルについて詳細に調べた。その結果、我々の樹立した抗体を用いたFACS等のタンパクレベル解析結果とRNA-seq解析結果に正の相関が認められた。この結果は、我々が樹立したモノクローナル抗体は特異的に標的抗原を認識していること、および各サブセットは遺伝子発現表現系が異なることを示唆する。現在、粉塵、シリカ(二酸化珪素)、ディーゼル排ガス粒子、PM2.5といった環境微粒子に対する肺胞マクロファージサブセットの炎症応答機構について解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
シリカ(二酸化珪素)を認識する4つのスカベンジャー受容体ファミリー分子SR-A1、SR-A6/MARCO、SR-B1、およびSR-B2/CD36の各々に対する中和モノクローナル抗体を樹立し、マウス肺胞マクロファージサブセットの分離および解析を行なった。さらにRNA-seq解析により各サブセットの遺伝子発現プロファイルを解析している。前年度は研究室引っ越しのため進行がやや遅れたが、今年度はその遅れを取り戻すことが出来たため、予定通り順調に進んでいると判断した。
スカベンジャー受容体ファミリー分子に焦点をあてて、環境微粒子に対するマクロファージサブセットの炎症応答機構を解析する。具体的にはシリカ、ディーゼル排ガス粒子、PM2.5等の認識機構、そのシグナル伝達経路、およびサイトカイン産生経路について解析を行う。さらに環境性肺炎モデルマウスを用いてその病態分子機構を解析する。
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Cell Reports
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