研究実績の概要 |
環境性肺疾患は、大気中汚染物質の曝露により引き起こされる慢性炎症疾患であり、その病態に様々な免疫細胞が関与している。とりわけ環境大気中の無機微粒子が肺胞マクロファージを刺激し、その炎症応答が肺炎の引き金となると考えられる。前年度までに我々は粉塵やPM2.5の主成分の一つであるシリカ(二酸化珪素)がクラスBスカベンジャー受容体(Class B Scavenger Receptor)のSR-B1によって認識されることを見出してきたが(Tsugita et al., Cell Rep., 2021)、モデルマウスを用いた実験で高濃度のシリカ結晶粒子曝露により引き起こされる肺線維化はSR-B1経路の阻害だけでは不十分であることが判明した。そのため同じクラスBスカベンジャー受容体のSR-B2、クラスAスカベンジャー受容体のSR-A1、およびSR-A6もシリカを認識することを確認し、その阻害活性を指標にそれぞれの中和モノクローナル抗体を新たに樹立した。マウス肺炎組織に浸潤する免疫細胞におけるSRファミリー分子の機能的発現について解析した結果、シリカ曝露前の肺胞洗浄液中にはCD11c^high SiglecF^highの常在性肺胞マクロファージのみが存在し、4つのSRファミリー分子の中でSR-B1のみが発現する細胞およびSR-B1とSR-A6の2つが発現する細胞が観察された。シリカ曝露後の肺胞内に浸潤してきたマクロファージと好中球の細胞表面上のSR発現パターンは異なり、とりわけ肺胞浸潤マクロファージには4つのSRファミリー分子全てが発現しており、シリカを強く認識していることが判明した。
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