研究課題/領域番号 |
19H03884
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
村田 真理子 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10171141)
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研究分担者 |
及川 伸二 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10277006)
翠川 薫 鈴鹿大学, こども教育学部, 教授 (20393366)
有馬 寧 鈴鹿医療科学大学, 医療科学研究科, 教授 (30263015)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | がん / 炎症 / 傷害関連分子パターン / アポトーシス / オートファジー / DNA損傷 |
研究実績の概要 |
炎症で傷害され、壊死した細胞からは傷害関連分子パターン(DAMP)が放出され、Toll様受容体(TLR)や終末糖化産物受容体(RAGE)を介して炎症が増強し、DNA損傷・遺伝子変異が生じ、発がんに至る。 炎症関連発がんにおけるDAMPの1つであるHMGB1に注目し、がん予防に資する方策を探索するため、HMGB1阻害作用が報告されているグリチルリチンを用いて炎症性大腸がんモデルでの検討を行った。azoxymethane /dextran sodium sulfate誘発大腸がんマウスモデルを作成し、グリチルリチンを経口投与した。大腸腫瘍の数がグリチルリチン投与群で有意に減少した。免疫組織染色により、大腸がんにおいてHMGB1が有意に高く、グリチルリチンがそれを抑制することが明らかになった。炎症により生じる酸化・ニトロ化DNA損傷にも同様の結果が得られた。さらに、がん幹細胞マーカーであるYAP1およびSOX9陽性細胞がグリチルリチンにより有意に抑制されることが確認された(Int. J. Mol. Sci. 2021, 22, 2609)。 携帯電話のディスプレイの製造に使用されるインジウム化合物が間質性肺炎や肺がんを起こすことが疫学調査や動物実験で見出されている。我々はヒト肺上皮がん細胞株A549に酸化インジウム化合物を曝露し、ニトロ化DNA損傷が引き起こされることを明らかにした。さらに、small interfering RNA (siRNA)を用いてHMGB1、RAGEおよびRAGEを発現抑制した結果、インジウム化合物によるDNA損傷が有意に抑制された。インジウム化合物は、HMGB1-RAGE-TLR9経路を介して肺上皮細胞に炎症を介したDNA損傷を誘発することを明らかにした(Sci. Rep. 2020, 10, 10741)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
傷害関連分子パターンとToll様受容体や終末糖化産物受容体を介して、炎症が増強し、DNA損傷が生じ、発がんに寄与することを明らかにした。また、グリチルリチンがHMGB1を阻害することで、炎症性腸疾患・大腸がんモデルマウスにおける抑制効果を明らかにし、予防への可能性が示された。これらの研究成果はいずれも国際学術雑誌に掲載され、研究はおおむね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
炎症関連がん患者組織あるいは動物モデルにおいてDAMPとオートファジーの関係を解析する。 1)炎症関連疾患組織におけるDAMPおよび受容体、DNA損傷の検出 2)オートファジー、アポトーシスの検出 3)酸化的DNA損傷指標8-oxodGの定量解析
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