研究課題/領域番号 |
19H03885
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
及川 伸二 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10277006)
|
研究分担者 |
村田 真理子 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10171141)
小林 果 三重大学, 医学系研究科, 講師 (70542091)
冨本 秀和 三重大学, 医学系研究科, 教授 (80324648)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 認知症 / バイオマーカー / 血液 / 酸化ストレス / プロテオミクス解析 |
研究実績の概要 |
日本の2021年高齢者人口は3,640万人(9月現在)、高齢者の人口比率は29.1%と増加を続けている。日本の高齢化率は、国連のデータでは他国に比べ非常に高く、要介護者等数も増加している。令和3年版高齢社会白書によると、介護が必要になった主な原因として、認知症が18.1%と最も多く、次いで、脳卒中15.0%、高齢による衰弱13.3%、骨折・転倒13.0%となっている。また、男女別に見ると、男性は脳卒中が 24.5%、 女性は認知症が 19.9%と特に多くなっている。さらに、日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究の推計では、2020年の65歳以上(高齢者)の認知症有病率は16.7%、約602万人となっており、6人に1人程度が認知症有病者である。しかし、アルツハイマー病などの多くの認知症は、発症すると根治療法が無く、患者のみならず家族の生活の質(QOL)を著しく悪化させる。また、認知症の早期段階は、家族や本人が認知症に気づかず病院を受診しないことから発見が遅れ、その後の進行や治療にも大きな影響を与える。従って、検診などで高齢者に広く応用できる早期診断ツールの開発が必要であることから、認知症の大部分を占めるアルツハイマー型認知症と血管性認知症を早期に診断できる血液バイオマーカーの探索を行う。アルツハイマー型認知症の発症予測やバイオマーカー等の研究は、年々進歩を遂げているが、早期患者を多数スクリーニングする方法は未だない。さらに、最近、認知機能障害に対する根本的な治療薬と考えられている抗アミロイドβ抗体アデュカヌマブの承認申請が行われ、アルツハイマー型認知症患者の早期発見の必要性がますます高まっている。本研究では、アルツハイマー病と血管性認知症の患者、健常者から採血を行い、タンパク質を単離精製後、プロテオミクス解析などを行いバイオマーカー候補を明らかにしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も血液を採取し血漿に分離後、解析の障害となる高含有タンパク質(アルブミンなど)を除去し、次いでクリーンアップキットを用いて、タンパク質の精製・濃縮を行い凍結した。その後タンパク質サンプルを定量性に優れた蛍光色素で標識を行い、等電点で分離(一元電気泳動)後、二次元電気泳動によりアクリルアミドゲル上で個々のタンパク質に分離した(2D-DIGE法)。各アクリルアミドゲルを画像解析装置(イメージアナライザー Typhoon)で個々のタンパク質スポットの蛍光強度を測定し、専用の解析ソフトで変動量を解析した。その中で、記憶に関する項目の評価が低い患者とそれ以外の患者、健常者の3群で変化が認められたスポットの中から有意差検定を行うことにより数十個のスポットを特定した。それらの中からタンパク質同定可能なスポットを、飛行時間型質量分析装置(TOF/TOF-MS)とデータベースを用いてタンパク質を特定した。 また、酸化損傷タンパク質の解析は、解析法を改良し、上記で凍結したタンパク質サンプルを等電点で分離(一元電気泳動)し、その後酸化損傷の指標であるカルボニル基と反応する2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)で処理を行いアクリルアミドゲル上で個々のタンパク質に分離(二次元展開)した。そのゲルをPVDF膜に転写し、DNPに特異的な抗体を用いたウェスタンブロット法で酸化損傷タンパク質の変動を解析した。さらに、数種類のβ-アミロイド凝集阻害剤の効果と安全性についても合わせて検討を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き認知症患者の血液の回収を続ける予定である。また、同様に回収した血液からタンパク質を分離・精製・濃縮し、その変動について解析を引き続き行っていく。さらに、酸化損傷タンパク質の変動解析についても同様に引き続き検討を進めていく。血漿中からのエクソソームの回収については、精製は出来るものの回収量が十分に得られていないので手法の改良の検討を続け、さらに脳由来のエクソソームの分離を行う。各種のβ-アミロイド凝集抑制抗酸化物質の有効性と安全性についても検討を行っていく。
|