研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)は食生活の変化、肥満人口の増加を背景に増加し、世界的な公衆衛生上の問題となっているが、NAFLDの疫学的実態およびその自然史については未だ解明されておらず、効果的な疾病対策の構築が世界的に遅れている。本研究は、文化背景の異なる2カ所(東北・中国地方)の大規模健診データおよび保存血清を用いてin vitro, in silicoによる解析を行い、NAFLDの実態、アルコール摂取量の実態、および脂肪肝診断例の肝病態推移・自然史解明、そして重篤な肝疾患へと進行するNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)の患者動態推計を行う計画概要である。 4年計画の1年目である本年度は、広島大学での研究倫理承認を取得し、公益財団法人広島県地域保健医療推進機構における、2013年4月から2018年7月の全健診受診者から肝炎ウイルス検査陽性者を除くのべ172,819人(実58,522人)、公益財団法人岩手県予防医学協会(以下、岩手県協会)における2008年4月から2019年3月(11年間)の全健診受診者から肝炎ウイルス検査陽性者を除くのべ3,644,951人(実797,644人)の健診データ(血液検査、問診、腹部超音波検査)を統合・データベース化し、解析を行った。食を含む文化背景が異なっているにもかかわらず、広島県と岩手県の性年代別アルコール飲酒頻度および飲酒量(多量飲酒・中量飲酒・非飲酒)別にみた脂肪肝有病率には同様の傾向が認められ、いずれも2-3割程度であった。健診超音波診断による脂肪肝罹患率は3,173/10万人年(95%CI:3,091-3,257/10万人年)であった。今後、脂肪肝診断例の自然史解明に加え、肝線維化マーカーの探索などin vitro研究も実施していく予定である。
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