研究実績の概要 |
世界的な公衆衛生上の問題である食生活の変化、肥満人口の増加を背景に、脂肪肝は増加傾向にある。本研究は大規模健診データの解析により、非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)の疫学的実態およびその自然史を解明することを目的としている。 本研究では、健診受診者(広島県健診機関A:2013-2018年、岩手県健診機関B:2008-2019年の全健診受診者、合計856,296人分)の匿名化された大規模健診データを基に、飲酒量情報および健診エコー受診情報を有する75,670人のデータベースを構築した。 同データベースの解析により、飲酒量区分別にみた脂肪肝有病率が、非飲酒者27.6%、中量飲酒者28.5%、多量飲酒者28.0%であること、脂肪肝罹患率は、非飲酒者3,084/10万人年、中量飲酒者3,754/10万人年、多量飲酒者3,861/10万人年であること、多変量解析の結果、飲酒は脂肪肝有病・罹患頻度に有意に関連せず、肥満がもっとも強く関連する独立因子であることなどを明らかにした。また、肝線維化指標のひとつであるFIB4-indexの一般集団(健診受診者集団)における分布について検討したところ、60代では3.8%、70代では16.4%が肝線維化高リスクとされる2.67以上に該当し、年齢因子の影響が大きいこと、また、非飲酒者・脂肪肝あり(=NAFLD)集団では、いずれの年代においても、非飲酒者・脂肪肝なし集団よりもFIB4-indexは有意に低値に分布していることなどを明らかにした。3年目である本年度は、それらの結果について文献的考察を行い、国際誌に論文を報告した(Liver International,2021. BMC Gastroenterology, 2022)。
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