研究課題/領域番号 |
19H03887
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
黒田 嘉紀 宮崎大学, 医学部, 教授 (50234620)
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研究分担者 |
佐藤 実 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (90162487)
日野浦 拓之 宮崎大学, 医学部, 助教 (90801168)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 鉱物油 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
本年度は、各種鉱物油(プリスタン、ヘプタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、イコサン)0.5mlをマウスの腹腔内に投与し、自己抗体誘導および、T細胞への影響を検討する予定であった。しかし実際にはプリスタン、ヘキサデカン、White mineral oil とパラフィンをマウス腹腔内に投与し、実験を行った。ヘプタデカン、オクタデカン、イコサンの投与実験は次年度に行うこととした。 投与後3ヶ月後に血清中の抗核抗体、抗DNA抗体、抗細胞質抗体、抗RNP抗体、抗Sm抗体、抗リボゾーム抗体を測定するとともに、脾臓細胞内のCD4陽性T細胞レセプターの変化を測定した。プリスタンおよびヘキサデカンでは抗核抗体、抗DNA抗体、抗細胞質抗体、抗RNP抗体、抗Sm抗体が検出されたが、White mineral oil とパラフィン投与マウスでは抗核抗体、抗DNA抗体、抗細胞質抗体は確認できたが、抗RNP抗体、抗Sm抗体は検出できなかった。一方CD4陽性T細胞レセプター(Costimulatory 分子を含む)については、コントロールマウスと、プリスタン、ヘキサデカン、White mineral oilおよびパラフィン投与マウスにおいて、レセプター発現に有意な差を見つけることができなかった。 次年度以降は、ヘプタデカン、オクタデカン、イコサンを投与し、自己抗体誘導について検討するとともに、鉱物油投与後にレセプター抗体、あるいはステロイドを投与し、T細胞レセプター機能をブロックすることで、自己抗体誘導がどのように変化するか検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々は鉱物油投与マウスにおける自己抗体誘導にはT細胞が関与していると予想し、そのメカニズムを解析している。まずCD4陽性T細胞レセプターに注目し、2019年度は各種鉱物油をマウスに投与して、脾臓由来のCD4陽性T細胞のレセプターの変化を、鉱物油投与マウスとコントロールマウスで比較した。しかし、有意な差を見つけることはできなかった。このように我々は自己抗体誘導に関してT細胞レセプターが関与していると考えているが、未だその証拠を得ることができていないため、今年度に関して進捗状況は遅れていると判断した。今後もT細胞レセプターに注目するとともに、樹状細胞、マクロファージ細胞についても、鉱物油投与でどのように影響受けるのか検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで鉱物油投与における自己抗体誘導とCD4陽性T細胞の関係を検討してきたが、有意な差は見つけられていない。しかし我々は自己抗体誘導にはヒトと同様に、T細胞が関与していると考えていることから、次年度は、ヘプタデカン、オクタデカン、イコサンを投与し、自己抗体誘導について検討するとともに、鉱物油投与後にステロイドおよび免疫応答に関与しているPD-1およびPD-L1(CD4陽性T細胞レセプターに分類)に対して、その抗体を投与し、自己抗体誘導への影響を評価する。それによって、自己抗体誘導にこれらのレセプターが関与しているか検討する。 PD-L1はPD-1のリガンドであり、PD-L1がPD-1に結合することで、シグナルが伝達され、抗体産生を抑制すると考えられている。一方ヒトではPD-1を刺激すると自己抗体が誘導されることもわかっている。そこで、鉱物油投与後にそれぞれの抗体を投与し、レセプター機能をブロックすることによる自己抗体誘導への影響と、ステロイド投与による自己抗体抑制時のT細胞レセプターの変化を見ることで、鉱物油投与による自己抗体誘導の機序を探っていく予定である。さらにはT細胞だけでなく、樹状細胞およびマクロファージ細胞についても鉱物油投与による影響を検討していく。
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