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2020 年度 実績報告書

うつ病リスクの低減を目的とした脳疲労の発生・回復メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 19H03891
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

近藤 一博  東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70234929)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード疲労 / うつ病 / ストレス / 脳疲労 / ヒトヘルペスウイルス6 / HHV-6
研究実績の概要

これまでの研究によって、脳の疲労と疲労回復が、身体の疲労と同様にeIF2αリン酸化と脱リン酸化と関連していることを示し、身体疲労の負荷によって、効果的に脳のeIF2αリン酸化を生じさせることができるモデルを作成した。また、不眠による疲労だけではなく、運動による疲労も脳の疲労を誘導することも見いだした。
昨年度は、血液中のマクロファージで潜伏感染し、疲労によって再活性化し唾液中へ放出されるヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が、嗅球で潜伏感染する際に産生する潜伏感染タンパク質であるSITH-1が、嗅上皮および嗅球の細胞にカルシウム流入を誘導することでアポトーシスを生じさせ、このことによってCRH、FKBP5、REDD1といった脳内のストレス因子の発現を増加させ、視床下部-下垂体-副腎皮質軸(HPA axis)を亢進させることでうつ病を引き起こすことを見いだした。また、我々はカルシウム流入を誘導する活性型のSITH-1に対する抗体測定法を開発し、うつ病患者における活性型SITH-1に対する抗体陽性率は79.8%でオッズ比12.2とであり、SITH-1がうつ病の発症に高頻度で強い影響を与えることを見いだした。この発見は、身体や脳に加わるストレスがHHV-6 SITH-1によって増幅されることによって、いわゆるストレスレジリエンスの低下状態を招くことで、うつ病の素因となることを示している。また、この発見は、これまで分子機構が不明であった、疲労、ストレス、うつ病を結びつけるものであると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、脳の疲労と疲労回復が、身体の疲労と同様にeIF2αリン酸化と脱リン酸化によって生じるかどうかを明らかにし、脳細胞のeIF2αリン酸化を抑制することで、うつ病の予防が可能かどうかも検討し、新たなうつ病の予防法の開発につなげることである。
昨年度は、疲労によるeIF2αリン酸化によって再活性化し唾液中へ放出されるHHV-6が嗅球で潜伏感染する際に産生する潜伏感染タンパク質SITH-1を産生し、嗅上皮および嗅球の細胞にカルシウム流入を誘導することでアポトーシスを生じさせ、脳内のストレス因子や、視床下部-下垂体-副腎皮質軸(HPA axis)を亢進させることでうつ病を引き起こすことを見いだした。また、血液検査によってSITH-1の産生を検出する方法を開発し、この現象がうつ病患者で、高頻度で生じていることを見いだした。この発見は、身体や脳に加わるストレスがHHV-6 SITH-1によってストレスレジリエンスを低下させ、うつ病の素因となることを示している。また、この発見は、これまで分子機構が不明であった、疲労、ストレス、うつ病を結びつけるものであると考えられる。
この成果は、本研究の最終的な目的であるうつ病の予防に直接的につながるものであり、研究が順調に進捗していると考えられる。

今後の研究の推進方策

これまでの研究によって、脳の疲労と疲労回復が、身体の疲労と同様にeIF2αリン酸化と脱リン酸化と関連していることを示し、身体疲労の負荷によって、効果的に脳のeIF2αリン酸化を生じさせることができるモデルを作成した。また、不眠による疲労だけではなく、運動による疲労も脳の疲労を誘導することも見いだした。
昨年度は、疲労によって唾液中への再活性化量が増加するヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が嗅球での潜伏感染時に産生するタンパク質SITH-1が、視床下部-下垂体-副腎皮質軸(HPA axis)を亢進させることでうつ病を引き起こすことを見いだした。
今後は、これらの成果を受けて、SITH-1発現マウス(SITH-1マウス)に疲労負荷を与え、うつ病につながる脳疲労の部位とメカニズムを明らかにする。方法としては、ウエスタンブロッティングや病理切片を利用して、疲労負荷を与えたSITH-1マウスの脳細胞でのeIF2αリン酸化やeIF2αリン酸化に関連するシグナルであるATF3、ATF4、C/EBP homologous protein (CHOP)の発現誘導を観察する。また、脳のグリア細胞の活性
化マーカー(Mertk、Gas6、CD68など)も検討する。また、これらの現象を生じる脳の部位を明らかにすることで、うつ病につながる脳疲労に関わる神経伝達に関する情報も得る。また、脳疲労からうつ病につながるシグナル伝達経路を検討するために、TaqMan Array を用いて、eIF2αリン酸化に関係するシグナル分子の発現変化を詳細に検討する。また、eIF2αリン酸化阻害剤であるISRIBによるこれらの分子の変化も検討し、脳細胞のeIF2αリン酸化を抑制することで、うつ病の予防が可能かどうかも検討する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Human Herpesvirus 6B Greatly Increases Risk of Depression by Activating Hypothalamic-Pituitary -Adrenal Axis during Latent Phase of Infection2020

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Nobuyuki、Oka Naomi、Takahashi Mayumi、Shimada Kazuya、Ishii Azusa、Tatebayashi Yoshitaka、Shigeta Masahiro、Yanagisawa Hiroyuki、Kondo Kazuhiro
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 23 ページ: 101187~101187

    • DOI

      10.1016/j.isci.2020.101187

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Cooperative activation of the human herpesvirus 6B U79/80 early gene promoter by immediate‐early proteins IE1B and IE2B2020

    • 著者名/発表者名
      Shimada Kazuya、Kobayashi Nobuyuki、Oka Naomi、Takahashi Mayumi、Kondo Kazuhiro
    • 雑誌名

      Microbiology and Immunology

      巻: 64 ページ: 747~761

    • DOI

      10.1111/1348-0421.12844

    • 査読あり
  • [学会発表] 労働疲労の科学ーうつ病の克服を目指してー2020

    • 著者名/発表者名
      近藤一博
    • 学会等名
      第16回日本疲労学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 大うつ病における血液中炎症性サイトカイン抑制因子の影響2020

    • 著者名/発表者名
      小林伸行、岡直美、近藤一博
    • 学会等名
      第16回日本疲労学会
  • [学会発表] 身体疲労回復機能を持つ食品成分のスクリーニング2020

    • 著者名/発表者名
      岡直美、小林伸行、近藤一博
    • 学会等名
      第16回日本疲労学会

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公開日: 2021-12-27  

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