研究課題/領域番号 |
19H03892
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
西村 泰光 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (90360271)
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研究分担者 |
武井 直子 川崎医科大学, 医学部, 講師 (00509276)
大槻 剛巳 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40160551)
李 順姫 川崎医科大学, 医学部, 助教 (70414026)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 石綿 / 悪性中皮腫 / 免疫 / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
アスベスト(石綿)は悪性中皮腫という予後不良な腫瘍疾患を引き起こす。我々はこれまでに石綿曝露と中皮腫が関わる抗腫瘍免疫機能低下の特徴の幾つかを明らかにしてきた。最近、ヒト細胞傷害性T細胞株EBT8の培養実験モデルにおいて、長期間の培養によって石綿曝露がIFN-γ遺伝子発現を徐々に低下させる作用があることが分かった。そこで、複数種の石綿曝露下EBT-8を長期間培養し、全転写産物の解析(トランスクリプトーム解析)から石綿曝露に共通した発現量変化を示す遺伝子を探索した。EBT-8を30 μg/ml濃度の2種類の白石綿(CA, JAWE)、青石綿(CR)、TiO2曝露下、或いは曝露せず(対照群)、IL-2添加培地で継代培養した。培養39日目以降に毎週細胞を回収し、生細胞を凍結保存した。目的遺伝子mRNA量をrealtime RT-PCRで測定すると共に、各群3例(全15例)のNGS解析により全転写産物量の変化を分析した。TiO2と対照的にCA, JAWE, CRの何れの石綿曝露もIFN-γ mRNA量の低下を引き起こし、IFN-γmRNA量は石綿曝露日数依存的漸減を示した。NGS解析より得られたコンセサス転写物の発現量を比較できた。その中で、CA, JAWE, CRに共通し4倍以上の変動を示す転写物は5つ有り、IFN-γを含み既知遺伝子が3つ、未知転写物が2つであった。IFN-γmRNA量の曝露日数依存的漸減は、蓄積した石綿による免疫機能抑制作用を支持する。また解析の結果は少数の共通する転写産物量変動を示し、機能低下機序との関わりを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおりに石綿曝露下で作成した複数の細胞株のトランスクリプトーム解析を実施し、石綿曝露に共通する転写産物量の変化を捉えることができており、また同時に石綿種による差異も確認することができている。それらの情報は、最終的な目標である悪性中皮腫と関わる免疫学的バイオマーカーの確立に寄与すると考えられ、従って、当初の計画にそって研究は概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
得られたトランスクリプトーム結果について更に詳細に解析を実施し、細胞培養を用いた検証実験を適宜実施する。また、悪性中皮腫患者の末梢血を用いた免疫機能解析を計画し、これまでの知見および今回得られた知見に基づき、最終的に悪性中皮腫と関わる免疫バイオマーカーの確立を目指す。
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備考 |
川崎医科大学衛生学ホームページ https://m.kawasaki-m.ac.jp/hygiene/
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