研究課題/領域番号 |
19H03899
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
岡本 希 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (70364057)
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研究分担者 |
中村 富予 龍谷大学, 農学部, 教授 (00413401)
森川 将行 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (30305726)
柳 元和 帝塚山大学, 現代生活学部, 教授 (60331732)
天野 信子 甲南女子大学, 医療栄養学部, 准教授 (70300358)
伊藤 加代子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (80401735)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢者 / 認知機能 / 歯周病 / 栄養 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、認知機能障害の発生リスクに関して、①歯周病による慢性炎症の関与と②咀嚼力低下による低栄養の関与の2つの機序を想定し、疫学的手法で検証することである。 2019~2021年度の主な研究成果として、認知機能検査Mini-Mental State Examination 23 点以下(認知機能障害46名)と24点以上(健常78名)(平均76歳の男女)を対象とし、認知機能障害と歯の本数と歯周病原細菌血清抗体価との関連を検証した。MMSE点数と4菌種の歯周病原細菌血清抗体価、ヘリコバクターピロリ菌、高感度CRP、血清アルブミンとの間に有意な関連はなかった。一方、ロジスティック回帰分析で脳血管疾患・心筋梗塞・高血圧・糖尿病・脂質異常症の有病状況、APOE ε4 allele保有、各種血清抗体価、高感度CRP、血清アルブミンの影響を調整すると、MMSE23点以下に対する歯の1本減少のオッズ比は1.06(95%CI;1.01-1.11, P= 0.030)で有意な関連が見られた。次に、口腔機能と認知機能の関連要因である栄養状態との関連に注目し、男性1591名(中央値71.0歳)、女性1543名(中央値71.0歳)を対象とし、咀嚼可能食品と栄養指標であるBMI及び血清アルブミンとの間に関連があるかを検証した。ロジスティック回帰分析で性・年齢・歯の本数・機能歯臼歯部の咬合支持・飲酒・喫煙・握力・病歴の有無を調整した後でも、5つすべての食品群を咀嚼できないことはBMI 21未満(四分位未満)に有意に関連していた(オッズ比1.51:95%CI 1.21-1.89)。これらの研究成果は、国際リハビリテーション学会総会(2019年6月)、BMC Oral Health(2019年6月)、日本公衆衛生学会学術総会(2019年10月)、日本衛生学会学術総会(2020年3月)で報告された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度に地域高齢者を対象に口腔機能検査、栄養調査、認知機能検査を行う予定であった。調査項目の選定(歯頚部の総細菌濃度、歯肉溝浸出液のバイオマーカー、咀嚼力に関連する口唇力と舌圧、低栄養の関連要因である嚥下機能検査、認知症検査など)と調査票作成に取り掛かり、対象者の募集と調査健診の通知を行ったものの、新型コロナ感染症の感染拡大のため、対面での調査健診を中止することになった。2021年度には、新型コロナ感染症予防対策を講じながら、調査健診を実施する予定であったが、感染拡大第5波、第6波のため、対面での調査健診を断念した。そこで郵送法のアンケート調査に切り替え、75歳以上の高齢者360名から、認知機能、日常生活動作評価、ヘルスリテラシー、食生活習慣、外出頻度、睡眠障害、フレイル、口腔機能のデータを収集した。これらのデータから、口腔機能の維持と適正な食生活習慣が認知機能の維持に関わっているかどうかを今後検証する。対面の疫学調査が実施できていない状況を考慮し、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、新型コロナ感染症予防対策を講じながら、対面での調査健診を行い、認知機能障害と歯周病関連のデータを収集し、歯周病による炎症と認知機能障害との関連を検証する予定である。また、咀嚼力維持群と低下群における栄養指標の違いが体重減少および認知機能障害の発生リスクの差につながるかについても検証する。2021年度に収集したアンケートを使って、多数歯欠損と食事の状況と認知機能との関連についてのデータ解析を進める予定である。
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