研究課題
本研究の目的は、認知機能障害の発生リスクに関して、①歯周病による慢性炎症の関与と②咀嚼力低下による低栄養の関与の2つの機序を想定し、疫学的手法で検証することである。2020年度に地域高齢者を対象に口腔機能検査、栄養調査、認知機能検査を行う予定であった。調査項目の選定(歯頚部の総細菌濃度、歯肉溝浸出液のバイオマーカー、咀嚼力に関連する口唇力と舌圧、低栄養の関連要因である嚥下機能検査、認知症検査など)と調査票作成に取り掛かり、対象者の募集と調査健診の通知を行ったものの、新型コロナ感染症の感染拡大のため、対面での調査健診を中止することになった。そこで、郵送法のアンケート調査に切り替え、75歳以上の高齢者360名から、内科疾患の病歴、認知機能、日常生活動作評価、ヘルスリテラシー、食生活習慣、外出頻度、睡眠障害、フレイル、口腔機能のデータを収集した。これらのデータから、口腔機能の維持と適正な食生活習慣が認知機能の維持に関わっているかどうかを検証することができる。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルス感染症の蔓延のため、2020年度に対面の疫学調査が実施できなかったが、アンケート調査に切り替え、高齢者360名からデータを収集した。歯科健診による歯周病の炎症の程度を評価することできないが、口腔機能低下と低栄養が認知機能に関与しているかについての検証を行うことができる。
2021年度には、新型コロナウイルス感染症予防対策を講じながら、対面での調査健診を行い、認知機能障害と歯周病関連のデータを収集し、歯周病による炎症と認知機能障害との関連を検証する予定である。また、咀嚼力維持群と低下群における栄養指標の違いが体重減少および認知機能障害の発生リスクの差につながるかについても検証する。2020年度に収集したアンケートを使って、多数歯欠損と食事の状況と認知機能との関連についてのデータ解析も進める予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Bone
巻: 139 ページ: 1,9
10.1016/j.bone.2020.115519.