研究実績の概要 |
1.気温上昇に対する人間集団の適応予測モデル開:気温変化に対する適応:気温変化に対応して生体が馴化する生理的適応の指標として年平均気温、家庭や職場、公共施設等におけるエアコンの導入の指標としてエアコン普及率、医療体制の整備指標として人口当たりベッド数などのデータを用いて、至適気温および高・低気温の相対リスクとの関連を定量化した。 2.ヒートアイランドによる超過死亡:ヒートアイランドによる超過死亡の推定および温暖化に伴うその将来予測を行う目的で、首都圏における1kmメッシュ気象データを収集し、ヒートアイランドのレベルを10段階に設定し、各レベルにおける気温ー死亡者数の関連および気温による寄与死亡者数を推定した。またヒートアイランドによる超過死亡を推定した。 3.暑熱影響と大気汚染物質との交互作用予測モデル開発:PM2.5および光化学オキシダント濃度と気温の心疾患・呼吸器疾患に対する影響の交互作用を定量化するためのモデルを考案した。 4.腸管感染症の超過死亡:2080年から95年において、腸管感染症による温度起因性死亡の世界平均は、社会人口動態的発展と気候変動に関する楽観的シナリオでは 6,599(95%信頼区間5,441-7,757)であり、悲観的シナリオでは 83,888(67,760-100,015)と高くなると推定された。予測された気温に起因する死亡のほとんどは,サハラ以南のアフリカと南アジアにおける赤痢,クリプトスポリジウム症,腸チフスによるものであった.ラテンアメリカ・カリブ海地域と東アジア・太平洋地域では、楽観的シナリオのもとで腸管感染症による死亡が純減される結果となった。結論として、気温に起因する腸管感染症の死亡は、より高気温な環境と好ましくない社会人口学的条件のもとで増加する可能性があることが示された。
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