研究課題/領域番号 |
19H03901
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
大平 哲也 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (50448031)
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研究分担者 |
木山 昌彦 公益財団法人大阪府保健医療財団大阪がん循環器病予防センター(予防推進部・循環器病予防健診部・健康開発, その他部局等, その他 (10450925)
山岸 良匡 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20375504)
岡田 武夫 公益財団法人大阪府保健医療財団大阪がん循環器病予防センター(予防推進部・循環器病予防健診部・健康開発, その他部局等, その他 (70450921)
今野 弘規 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90450923)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳卒中 / 推移 / 危険因子 / 生活習慣 |
研究実績の概要 |
脳卒中は我が国の死因の第4位であることに加え、要介護の重要な危険因子である。脳卒中発症には飲酒、喫煙、身体活動、睡眠、食生活等の生活習慣、高血圧、糖尿病、心房細動等の生活習慣病及び心理社会的因子の影響が考えられるが、これら危険因子の寄与危険度の変遷を包括的かつ縦断的に地域住民を対象として評価を行った研究は欧米を含めて殆どない。そこで本研究では、長期間疫学研究を実施している地域を対象として、1980年代から2010年代まで10年毎の4つのコホートを分析することにより、我が国の脳卒中発症と予後の動向、脳卒中に関連する身体・心理・社会的因子の時代変遷を検討すること、及び脳卒中発症に関する身体心理社会的な新規の危険因子を同定し、今後の脳卒中予防対策に寄与する知見を得ることを目的とした。 秋田、茨城、大阪の30歳以上の地域住民を対象として循環器健診のデータをⅠ期:1981年~1985年、Ⅱ期:1991年~1995年、Ⅲ期:2001~2005年、Ⅳ期:2011~2015年の時期(対象人数はいずれも約10,000人)に分け、それぞれの時期の非脳卒中者を対象として、フォローアップ時期のそれぞれの時期の病型別脳卒中発症率を比較し、脳卒中の病型別の発症率の推移を比較するために、本年度はこれまで測定したデータを統合し、解析のためのデータセットを作成した。また、脳卒中発症に関連する新規の身体心理的因子に関する前向き研究を行った。 その結果、高尿酸血症は女性において全脳卒中、特に虚血性脳卒中の発症リスクを高めることが明らかになった。また、心不全のバイオマーカーであるNTproBNPは脳梗塞の発症リスクを高めることが明らかになった。さらに、心理的因子である怒りの程度はその後の循環器疾患、特に脳梗塞の発症リスクを高めることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は以下の3つのテーマについて研究を進めた。 1.地域住民における病型別脳卒中の発症率の時代変遷、病型別脳卒中と生活習慣および身体的因子との関連の時代変遷についての前向きコホート研究:秋田、茨城、大阪の地域住民を対象として循環器健診のデータをⅠ期:1981年~1985年、Ⅱ期:1991年~1995年、Ⅲ期:2001~2005年、Ⅳ期:2011~2015年の時期に分け、それぞれの時期の非脳卒中者を対象として、フォローアップ時期の病型別脳卒中発症率を比較し、脳卒中の病型別の発症率の推移を比較するとともに、脳卒中及びその病型に関連する危険因子の推移を、相対危険度・寄与危険度を算出して検討を行う。これらは複数の地域のデータを40年間にわたってデータの収集を行ったものであり、データ構成が複雑であるが、今年度はこれらのデータを全て統合し解析できる状態にした上で解析を進めつつある。 2.地域住民における病型別脳卒中と身体・心理・社会的因子との関連の時代的変遷についての前向きコホート研究: テーマ1におけるⅡ期:1991年~1995年、Ⅲ期:2001~2005年、Ⅳ期:2011~2015年の時期については、問診・質問紙票を用いて、自覚的ストレスの有無、怒り、不安、笑い、職業等の心理社会的因子の把握、及び食習慣、身体活動、飲酒・喫煙、睡眠時間等の詳細な生活習慣についての調査を行っている。そこで、病型別脳卒中と身体的因子、生活習慣、心理社会的因子との関連について前向きに分析する。本年度は怒りについて解析を行い、脳卒中との関連を明らかにした。 3.地域住民における睡眠呼吸障害、家庭血圧・自律神経機能、血管内皮機能、炎症、血中NT-proBNP等の新しいバイオマーカーと脳卒中との関連についての前向き研究:本年度は血中NTproBNPと脳卒中との関連を前向きに検討しその関連を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
1.地域住民における病型別脳卒中の発症率の時代変遷、病型別脳卒中と生活習慣および身体的因子との関連の時代変遷についての前向きコホート研究及び2.地域住民における病型別脳卒中と身体・心理・社会的因子との関連の時代的変遷についての前向きコホート研究についてはⅣ期のフォローアップ調査を行い、最終年度までに1980年代から2010年代までの4つの前向きコホート研究の結果をまとめる。 3.地域住民における睡眠呼吸障害、家庭血圧・自律神経機能、血管内皮機能、炎症、血中NT-proBNP等の新しいバイオマーカーと脳卒中との関連についての前向き研究については、高感度CRP、DHEA-Sのバイオマーカー及び家庭血圧・心電図に加え、自律神経機能、笑い等の新規のストレスマーカーを含めた新しいマーカーと脳卒中との関連を引き続き検討していく。 4.福島県地域住民における震災が脳卒中発症に及ぼす影響についての前向き研究、については、福島県内の放射線事故後に避難区域に指定された地域を含む13市町村住民の内、震災後の2011年~12年に健診及びこころの健康度・生活習慣に関する調査を受けた約50,000人を対象として、避難生活(対象者の約4割)、被災体験(津波、原発の爆発音の体験等)、トラウマ反応、うつ症状や笑いの頻度、社会経済状況悪化等の有無が他の生活習慣や危険因子と独立して2013年以降の脳卒中発症に関連するかどうかについての検討を行う。 テーマ4についてはフォローアップを2021年まで行い、10年間の前向き研究の結果をまとめる。
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