研究課題/領域番号 |
19H03909
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
立道 昌幸 東海大学, 医学部, 教授 (00318263)
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研究分担者 |
中野 匡 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90217795)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ICT機器利用 / 健康障害 / 緑内障 / 認知症 |
研究実績の概要 |
我々は、これまで労働者においてVDT機器の長時間・長期間使用が視神経の変性疾患である緑内障による視野異常の発症と関連があることを報告してきた。(近年のICT機器の発展により、以後VDTをICTに読み替える)視機能の保持は、今後高齢化社会でのQOLを保つ上で重要な公衆衛生課題であるため、この知見を高いエビデンスレベルで実証し、予防対策を講じるためには、質の高い前向き研究にて検証する必要がある。そのため本研究では、緑内障発症のリスクと関連する詳細なICT機器(PC、スマホ、タブレット等)、使用目的、方法(CAD・CDAM、監視、プログラミング、ゲーム、Web検索、ワード、メール等の一般使用)、の曝露と緑内障の発症との関係を明らかにすることと、その、曝露評価を行い、もし閾値があれば、予防としての使用時間限界を提唱することを目的とする。 また、副次的な目的として、ICT機器の長時間使用は、身体活動の低下をもたらしセデンタリ-ライフスタイルとして認知症をはじめ様々な重要な健康障害のリスクを上げることが指摘されている。そこで本研究では、成人において、ICT機器使用と認知症や軽度認知障害(MCI)発症への影響についても明らかにする。 初年度は、ベースラインの設定を行い、その調査を実施した。曝露については、全コホートにIT機器の使用状況に関する調査を終了した。その結果、IT機器使用時間が長ければ長いほど、眼軸長の延伸が認められた。この結果は、我々の仮説を証明するものとして非常に重要と考え、論文発表を行った。今後この点については、最終年度に再度、眼軸長の測定を行い、中高年においても眼軸長が延伸することを立証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、ベースラインの設定を行い、その調査を実施した。曝露については、全コホートにIT機器の使用状況に関する調査を終了した。アウトカムである緑内障診断については、まず、スクリーニングするため視野検査計であるFDT検査に加え、眼底検査をOCTで実施しさらに感度が高くなるように、スクリーニングプログラムを開発中で、現在OCTデータの収集が完了した。また、これらのスクリーニングにて陽性になった方について、確定診断をすべく、ハンフリー視野計を用いた視野検査についての検査実施体制の環境整備を行い、稼働させることができた。今後、OCTとハンフリー視野計にて、緑内障の確定診断が可能になった。 副次的アウトカム測定として、認知症スクリーニングについては、MSP-1100(日本光電:鳥取大学、浦上克哉教授特許)を60,63,66,69歳時に実施し、12点以下(満点15点)、あるいは13点以上でも前回より点数が下降した場合はさらにAlzheimer’s Disease Assessment Scale TDASプログラムを行い危険域以上には、日立総合病院にて脳MRI検査とともに神経内科的診察を実施し、MCIの確定診断を得ている。従って、現在、曝露評価とアウトカムの評価については、概ね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
今後研究の課題は、曝露評価を自己記入式の質問指標で行っている点について、客観的な測定方法を考慮する点である。まずは、インタビュー調査結果との妥当性評価を行う。 次に、緑内障スクリーニング方法について、現在、FDT検査を実施してスクリーニングとしているが、さらに感度を上げるためにOCT検査を加えたが、このOCT判定プログラムを開発することを今年度の目標としている。既に、過去のOCTデータを全て数値化したデータを入手し、AI解析も活用しながら、現在プログラムを作成中である。 本研究は、職域でのコホート研究であるため、ほぼ毎年コホートの調査が可能であることが優位である。今年度も、曝露と緑内障のアウトカムが確実に追えるように、実施体制を整えている。
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