研究課題
我々は、これまでVDT機器の長時間・長期間使用が視神経の変性疾患である緑内障による視野異常の発症と関連があることを報告してきた。(近年のICT機器の発展により、以後VDTをICTに読み替える)視機能の保持は、今後高齢化社会でのQOLを保つ上で重要な公衆衛生課題であるため、この知見を高いエビデンスレベルで実証し、予防対策を講じる必要がある。緑内障には様々な危険因子が報告されているので、因果関係の証明においては、交絡やバイアスを可能な限り除いた質の高い前向き研究にて検証する必要があり、特に、ICT機器の種類(PC、スマホ、タブレット等)、利用方法(CAD・CDAM、監視、プログラミング、ゲーム、Web検索、メール使用の一般利用等)が緑内障の発症と関連するのかなどの詳細な検討が不可欠である。そのため本研究では、緑内障発症のリスクと関連する詳細なICT使用機器、使用目的、方法、時間の特定を行い、予防法を提唱することを目的とする。特に、眼軸長の延伸が緑内障のリスクと考え、青年期以降にもICT時間と関連して、眼軸が延長するのかを検討する。ICT使用と眼軸長延伸との関連に関しては経年的な眼軸長測定で解明可能であるが、最終的なアウトカムとしての、緑内障発症との関連を証明するには、緑内障スクリーニング法の確立が急務であった。近年、眼科領域では、眼底検査として、Optical Coherence Tomography(OCT)と呼ばれる三次元断層撮影機器が開発され、多くの臨床の場で利用されている。そこで、本研究はこのOCTの検診利用に着目し、OCT検査を検診応用することにより緑内障検診の精度の問題を解決した。最終のアウトカムは、緑内障の診断であるため、OCTを用いた診断プログラムの開発を行い、その精度を検証できた。現在、そのOCTを用いてコホートに際して、アウトカムを測定中である。
2: おおむね順調に進展している
設定していたコホートに対して、全員にOCTを実施しておりデータが集積されている。これらの結果から、緑内障をスクリーニングして、アウトカムとして、ICT時間を曝露として、その因果関係を検証する。
本年度は、最終年度であるので、これまでの観察年度毎のアウトカムを検証し、前向き研究としての曝露とアウトカムの因果関係を明らかにする。そのために、交絡因子を検証する必要があるため、健診データ、緑内障検診データ、ICT使用時間データ、OCTデータを入手して解析中である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Transl Vis Sci Technol .
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Scientific Reports
巻: 12 ページ: 1
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