研究課題/領域番号 |
19H03910
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
井上 茂 東京医科大学, 医学部, 教授 (00349466)
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研究分担者 |
岡 浩一朗 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (00318817)
原 丈貴 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (40420723)
齋藤 義信 慶應義塾大学, 健康マネジメント研究科(藤沢), 助教 (40750261)
鎌田 真光 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (60523090)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 身体活動 / 運動 / 生活習慣病 / 地域介入 / クラスターランダム化試験 / 社会実装 / 普及研究 |
研究実績の概要 |
申請者らは先の科研費(2016-18年度・基盤 (B)・ 16H03249)で、ソーシャル・マーケティングを活用したコミュニティ・ワイド・キャンペーン(CWC)による身体活動促進の効果を地域クラスター・ランダム化試験で明らかにした。本研究はこれを発展させるもので、【研究1】では、先の研究の対象者をさらに追跡して要介護・死亡をアウトカムとした長期効果を検討する。【研究2】では、介入地区を島根県雲南市全域、および神奈川県藤沢市全域に広げ、その効果を単群の前後評価で検証する(社会実装・普及研究)。 【研究1】追跡対象者4,559人のうち、介入5年後の時点で252人の新たに要支援・要介護の認定と、157人の死亡を確認した。死亡、要介護をアウトカムとした効果(群間差)はこの時点では認められていない。【研究2】雲南市における介入の全市展開では、介入開始2年後の平成30年度の調査データの分析を進め、推奨される身体活動の実施者割合の有意な増加(有効回答数3171人、48.4%から55.0%へ6.6%ポイントの増加、P<0.001)を確認した。これまでの介入内容で効果が確認されたことより、これまで通りの方針でさらに介入を継続した。すなわち、介入地域内における協働ネットワークの構築のために市議会、市関係部局、地域自主組織等に向けた情報発信を行い連携強化を図るとともに、運動促進基盤整備として市内ケーブルテレビを活用した情報発信、普及用リーフレットの改訂、地域運動ボランティアを通じた運動普及に取り組んだ。並行して、もう一つの介入地域である藤沢市関係者と情報交換を行い(7/16:神奈川県藤沢市、8/23-24:島根県雲南市)、介入戦略の確認と共有を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1では介入開始から5年後の時点における死亡、要介護の状況に関する分析を行った。介入開始5年後の時点では介入地区において身体活動実施者割合の有意な増加(Kamada M, Inoue S, et al. Int J Epidemiol 47(2): 642-653, 2018)を確認しているが、死亡、要介護については群間差を得るに至っていない。今後、さらに長期追跡を行う。介入を社会に実装する研究2では、介入開始から2年後の効果を確認し、これまでと同様の介入戦略で介入を継続している。藤沢市では2013年、2015年、2018年の住民調査の結果の分析を進め、介入を継続している。また、地域介入の中核を担う雲南市、藤沢市の職員が相互の地域を訪問、視察して意見交換を行い、介入の基本的な戦略や地域に応じた介入方法の在り方を検討することができた。2019年度は調査を実施しない年であったが、介入は予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
研究1では長期指標(死亡、要介護)に群間差を認めていない。その要因の一つとして、介入地域において介護施設が建設されたことの影響が推測されている。要介護認定に伴う住所移動など、アウトカムに影響することが起こっていないのかを、さらに詳細に検討しする。ただし、最終的には令和3年度に介入開始12年後の評価(死亡、要介護)を行う予定であり、死亡、介護といった指標が変化するにはある程度の時間が必要なのかもしれない。死亡、介護情報の継続的な取得に向けて雲南市との協力を図る。 研究2では、比較的早い段階で(雲南市では2年後調査で、藤沢市では3年後調査で)地域介入の効果が認められている。この結果を受けて、介入はこれまでの方針を継続している。令和3年度には両市ともに追跡調査を計画しており、準備を進める。
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