研究課題/領域番号 |
19H03916
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小湊 慶彦 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30205512)
|
研究分担者 |
窪 理英子 群馬大学, 医学部, 技術職員 (40747127)
高橋 遥一郎 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50640538)
佐野 利恵 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (70455955)
早川 輝 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90758575)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ABO遺伝子 |
研究実績の概要 |
・我々は9番染色体長腕34.3に存在するABO遺伝子の転写調節機構を調べてきた。その結果、プロモーター、赤血球系細胞特異的転写調節領域(+5.8-kb site)、上皮細胞特異的転写調節領域(+22.6-kb site)を同定してきた。ゲノム編集を用いて+22.6-kb siteを欠失した胃癌培養細胞KATOIIIを作製すると、ABO遺伝子と OBP2B遺伝子の発現が低下することが観察された。クロマチンは転写因子CTCF結合領域を介してループ構造をとり、その内部で遺伝子発現が制御されることが明 らかになっている。クロマチンループ構造は連続的に変形しても性質が保たれることを考慮し、トポロジカル関連ドメイン(Topologically Associated Domain, TAD) と呼ばれる。ABO遺伝子周囲にはループ形成に基づくTADが想定されている(Lu Y et al. Nucleic Acid Res 2017)。従って、上皮細胞ではABO遺伝子と OBP2B遺伝子が同一のTAD内に存在し、同一の転写制御を受けている可能性が示唆される。すなわち、ABO遺伝子とOBP2B遺伝子はエンハンサーシェアリングをして いるようにみえる。また、前述の論文ではSURF1、SURF1、ADAMTS13が同一のTAD内に存在しているが、+22.6-kb siteを欠失した胃癌培養細胞KATOIIIではSURF1、 SURF1、ADAMTS13の発現が低下していた。但し、これらの発現低下の低下幅は少なかった。以上からABO、 OBP2B、SURF1、SURF1、ADAMTS13の発現は+22.6-kb siteによる調節を受けていることが判った。 ・K562細胞を低酸素下(2%)に置いたところ、ABO、SURF1、SURF1、ADAMTS13等の遺伝子発現が減少した。白血病において骨髄内の微小環境が骨髄細胞の分化に影響を及ぼし、ABO血液型遺伝子の発現抑制から、抗原減少を惹起させる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ABO遺伝子を含むトポロジカル関連ドメイン(Topologically Associated Domain, TAD)にABO、OBP2B、SURF1、 SURF1、MED22、ADAMTS13等が入ることが想定されていることから (Lu Y et al. Nucleic Acid Res 2017)、同一TADに存在し、特徴的なヒストン修飾を有することより転写調節領域と推定される+36-kb siteから+41-kb site(ABO遺伝子翻訳開始点の下流36-kbから41-kbの領域)をゲノム編集を用いてバイアレルに欠失した赤白血病細胞K562を作製し、クローニングを行い、バイアレルにゲノム欠失細胞3種類を得た。遺伝子発現を調べたところ、+36-kb siteから+41-kb siteの欠失ではABOとOBP2B発現が減少、SURF1、SURF1、MED22、ADAMTS13等の発現には大きな変化はなかった。一方、+36-kb siteの欠失ではABO発現が増加、SURF1、SURF1、MED22、ADAMTS13発現には大きな変化はなかった。従って、ABO発現に対して+36-kb siteは抑制的に、+36-kb siteから+41-kb siteは促進的に働くことが分かった。 低酸素状態(酸素2%)でABOを含むSURF1、SURF1、MED22、ADAMTS13等の遺伝子発現が低下することが新たに分かった(データ未発表)。白血病において血液型が減少する原因として。骨髄微小環境における低酸素の関与が示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでのゲノム編集を用いた変異細胞の結果から、ABO遺伝子を含むTAD内の、+22.0-kb site、+36-kb siteから+41-kb siteがABOの発現調節に関与することが分かった。 ヒストン脱メチル化酵素阻害剤、低酸素状態(酸素2%)でABO遺伝子発現が低下することが新たに分かった(データ未発表)。それらが+36-kb siteから+41-kb siteに影響を及ぼすかを調べる。 ・+36-kb siteから+41-kb siteをゲノム編集を用いて欠失した赤白血病細胞K562におけるヒストン修飾や転写因子CTCF結合の状態を網羅的に検索し、ゲノム構造の変換を検討する。 ・+36-kb siteから+41-kb siteをゲノム編集を用いて欠失した胃癌培養細胞KATOIIIを作製し、ヒストン修飾や転写因子CTCF結合の状態を網羅的に検索し、ゲノム構造の変換を検討する。 以上から、TAD内における+36-kb siteから+41-kb siteの機能が明らかにされる。
|