研究課題
類人猿では赤血球にABO血液型抗原が存在するが、猿では血液型抗原の発現が微弱である。そこで、ヒトの+5.8-kb siteに相当する領域について、類人猿と猿を比較したところ、類人猿ではヒトと同様に内部にlong terminal repeat(LTR)を含むが、その部分が猿ではshort interspersed nuclear element(SINE)であった。このSINEには転写活性がないことから、猿から類人猿への進化においてSINEからLTRに置換され、+5.8-kb siteが形成され、赤血球系細胞においてABO遺伝子が発現することとなり、赤血球のABO血液型抗原の出現に至ったと推測される。猿で血液型抗原の発現が微弱である、その他の理由として、猿ではH抗原発現が未熟であることが挙げられる。FUT1遺伝子の発現に相違があることが予想され、類人猿のFUT1遺伝子イントロン1内にはSINEが存在するが、猿ではその配列が欠損することから、猿から類人猿への進化においてSINEを獲得したことがFUT1遺伝子発現を惹起したと推測されている。一方、このSINEはLTRに接している。そのLTRには多数のGATA結合サイトがあり、ゲノムアノテーションデータはそのLTRが転写活性化領域であることを示唆していることから、発現する細胞分化段階を考慮すると、FUT1遺伝子発現は転写因子GATA-1/2に依存する程度が増えていることが推測される。ところで、赤血球系細胞分化においてABO遺伝子発現がFUT1遺伝子発現に先行するという実験結果や骨髄異形成症候群の遺伝子解析結果から、ABO遺伝子発現は転写因子GATA-2に依存し、FUT1遺伝子発現は転写因子GATA-1に依存すると推測される。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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