研究課題/領域番号 |
19H03957
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
石垣 陽 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特任准教授 (50723350)
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研究分担者 |
田中 健次 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (60197415)
江藤 和子 横浜創英大学, 看護学部, 教授 (90461847)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 室内環境 / PM2.5 / 途上国 / ゲーミフィケーション / バイオマス燃料 |
研究実績の概要 |
本研究は、(a)学校保健活動を通じたリスクアウェアネス(1次予防)、(b)スマホセンサでの可視化による親子のリスク対話(2次予防)、 (c) コミュニティ活動としての住環境改修とその成果のWebでの共有(介入)、(d)センサによる長期経過観察(3次予防)を行い、新しいヘルスプロモーション手法の有効性を検証することを目的とする。本年度は現地渡航により家庭状況の基礎調査と住民の健康影響評価(フィールドワーク)を行い、さらに次年度に向けたシステム試作を行った。以下で順に説明する。 フィールドワークのため2019年8月に現地渡航し、3地区、10か所の世帯でATS呼吸器症状質問票により基礎データを収集した。どの家庭もバイオマス燃料を使用しており、キッチン使用者である20代の女性に呼吸器関連の症状(主に目の痛み、咳)が出ていることがわかった。 また5か所の家庭で測定器による長期的・詳細なPM2.5濃度のトレンド測定を行い、バイオマス燃料を使うとPM2.5濃度が1立方メートル当たり1ミリグラムを超える健康に影響を及ぼすレベルまで高まることが確認された。現地に設置したソーラー換気扇のプロトタイプは濃度低減に効果があることもわかった。 フィールドワークを受け、そもそも地域住民のPM2.5に対するアウェアネス(理解・認識)や関心が低く、換気などの基本的な対策もなされていない事がわかった。そこでPM2.5濃度やその危険性を目に見える形で可視化できるスマートウォッチ型のデバイスを試作している。これを元に、現地小中学校での体験型学習のツールとして応用できるようコンテンツ作りを進めており、次回渡航時には現地にてフィールドテストも行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年8月に現地へ渡航し、キガリ市及び近郊の3つの地区で基礎調査のためのフィールドワークを行った。合計10か所の家庭においてATS呼吸器症状質問票により基礎データを収集した結果、どの家庭でも呼吸器関連の症状(主に目の痛み、咳)が出ていることがわかった。訪問した家庭は、主に炭燃料を調理に使っており、薪を使っている家庭もあった。キッチンを使用しているのは全て女性であり、年代はいずれも20代だったため、若い女性・妊婦の曝露が懸念される。調理を行っている時間としては一日平均で2時間前後という家庭が多く、換気についてはドアを開けている程度であった。 現在、5か所の家庭において家屋調査・分類と、測定器による長期的なPM2.5濃度の測定を継続している。これまでの分析から、薪や炭燃料を使っている家庭での濃度が有意に高く、健康に影響を及ぼすレベルであることが確認された。また、ソーラー換気扇のプロトタイプが良好に動作していることも確認され、濃度低減に効果があることがわかった。 これらの詳細は国内外の環境系の学会で発表し、主に今後の調査手法について学術的なフィードバックを得た。
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今後の研究の推進方策 |
フィールドワークを受けて、次年度は現地での一次予防~二次予防を試行する。そのため、学校での指導や、家庭内での測定・議論といった実証実験に取り組む。今年度の成果から生体影響が明確となり、また燃料によるPM2.5濃度の差や、換気による濃度低減といった定量的な関係性が見えてきているため、これらを織り交ぜた教育コンテンツを作成する。 さらにフィールドワークから、そもそも地域住民のPM2.5に対するアウェアネスが低く、関心が無い事がわかってきた。そこでPM2.5濃度やその危険性を目に見える形で可視化できるスマートウォッチ型のデバイス(たまごっち(R)のイメージ)を制作したので、学校(特に小中学校)での体験型学習のツールとして応用できるようコンテンツ作りを進める。 並行して、改良かまど等のコストのかからない改善策(介入ツール)について国内事例を調査し、JICAや筑波大学のチームにヒアリングを行った。現在、ルワンダでも適用できるデザインを検討しており、次回渡航時には現地にてフィールドテストを行う予定である。
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