研究課題/領域番号 |
19H03959
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 ゆかり 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (00306846)
|
研究分担者 |
福間 真悟 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (60706703)
池之上 辰義 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (70761443)
辰巳 明久 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 教授 (90295634)
塩瀬 隆之 京都大学, 総合博物館, 准教授 (90332759)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 健康長寿 / 非活動高齢者 / ビーコン / 行動ログ / タブレット / ナッジ / グーグルアンドロイドアプリ |
研究実績の概要 |
本研究は、健康長寿の延伸を目指した数々の介護予防プログラムの参加高齢者が固定化している社会的問題を背景に、地域の大多数を占める非活動高齢者をいかに取り込み、主体的な健康行動選択を支援できるか、その手段を明らかにすることを目的としている。 自立高齢者の生活情報を持続的に取得する環境整備を目指し、低電力のビーコンを用いて高齢者の行動ログを取得するプロジェクトをスタートした高齢者施設をフィールドとし、本年度は次の3点を実施した。 1)プロジェクト参加高齢者の継続動機づけ、および参加者増にむけた取り組みを行った。具体的には、定期報告会の開催、個別フィードバックの返却、季節ごとのポスター、スタンプラリーの開催を行った。結果、年度当初は80余名であった参加者数は、年度末には113名となり、うち90%は日常的にビーコンを持って日常生活を送っている状態となった。 2)高齢者が持ち歩くビーコンを認識し、カスタマイズしたトークフローを開始するデバイスを施設内に新規に導入することで、高齢者との日常的で持続的な双方向のコミュニケーションを目指した取り組みを行った。まず、適切なデバイスの検討として、AIスピーカ(GOOGLE MINI)の試験導入を数回実施した。その結果、高齢者の情報受容は、聴覚だけでは困難であり、視覚情報が必要であること、また情報発信においては、現在の自然言語処理の技術水準に合わせた形での発語をすることは高齢者には難しいことがわかった。結果として、スピーカー機能にすぐれ、音声コントロールに最適なタブレット端末を採用することとした。タブレットに搭載するグーグルアンドロイドアプリの開発に着手している。 3)これまでの取り組みをImplementation Researchとして学術論文としてとりまとめ、投稿に至った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、2019年度内にビーコンを認識し、高齢者との双方向のコミュニケーションを可能にするデバイスの実装を計画していた。しかし、新型コロナウィルスの影響で、対象高齢者施設では2月末から外部の人間の立ち入りを制限しているため、搭載するグーグルアンドロイドアプリの開発過程に必須である試作機のデモを実施することができていない。また、新しいコミュニケーションデバイスは施設内に10台設置を予定していたが、中国からの部品入手が滞っている理由で入手ができず、当面は1台で開始する見込みとなっている。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は、主に以下の3点を実施する 1)ビーコンを認識し、高齢者との双方向のコミュニケーションを可能にするデバイスの実装 新型コロナウィルスの感染蔓延状況により、デバイスの実地検証および実装が大幅に遅れる可能性がある。そうした状況であっても、高齢者の技術受容特性および身体・心理特性を踏まえて、高齢者が日常的にタブレットを使う動機づけを高めるため、ビジュアルコミュニケーションデザイン、インクルッシブデザインとの協働を行う。 2)高齢者の特性に応じて効果的な健康行動変容メッセージを解明する介入研究の実施計画の作成 ビーコンを持つ高齢者が施設内設置されたタブレット端末を日常的に使い、個人を認識した双方向コミュニケーションが可能となる環境を活用し、個人レベルでランダム化した健康情報メッセージの効果検証のための介入研究の実施計画を作成する。具体的には、①評価可能なアウトカム指標との関連性を検討した健康情報の選定、②行動経済学の専門家の協力を得て、損失回避、利用可能性ヒューリスティック、同調性ヒューリスティックなどのナッジを、単独、あるいは組み合わせて取り入れたメッセージを作成、等が含まれる。 3)昨年度集積された行動ログデータと施設から入手した参加高齢者の生活・医療情報を活用し、参加高齢者の行動特性を解析し学術論文を投稿する。
|