研究課題/領域番号 |
19H03977
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
桐本 光 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (40406260)
|
研究分担者 |
美馬 達哉 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (20324618)
緒方 勝也 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 教授 (50380613)
鈴木 誠 東京家政大学, 健康科学部, 教授 (80554302)
渡邊 龍憲 広島大学, 医系科学研究科(保), 助教 (20868400)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 静磁場刺激 / 背外側前頭前野 / ワーキングメモリ / 視覚認知課題 |
研究実績の概要 |
1.背外側前頭前野(DLPFC)に対する経頭蓋静磁場刺激(tSMS)はGo/NoGo課題のパフォーマンスに影響を及ぼさない. 8名の健常被験者が30分間の左または右DLPFCに対するtSMS前後,刺激終了10分間後に視覚刺激に応答するGo/NoGo課題を行った.3試行回の反応時間(約180 msec),エラー発生率(0.003%)に,疑似刺激と比較した変化は認められなかった.後頭葉に対するtSMS前後の視覚選択反応課題では,課題の難易度が高い時にのみ,静磁場の介入効果が認められたという先行研究による報告がある.本研究結果からも,DLPFCに対する静磁場介入効果の有無を検討するには,Go/NoGo課題は認知負荷が軽度であり,より複雑でエラーを誘発しやすい視覚認知課題を設定する必要があると考えられる(Watanabe et al, Brian Sciences, 2021) 2.左DLPFCに対するtSMSはワーキングメモリ課題時の事象関連電位に影響を及ぼす. 13名の健常被験者が,疑似刺激及び左DLPFCに対するtSMS前後,刺激終了15分後に2バックテストを実施した.すべての条件において,反応時間の変化は認められなかったが,左DLPFCに対するtSMS前と比較して,刺激終了直後にERPの成分N2の潜時が有意に遅延した.ERPの成分N2はワーキングメモリ課題遂行中の,意思決定に関与すると考えられていることから,DLPFCに対するtSMSは,この領域が重要な役割を果たす視覚認知課題のパフォーマンスをモデュレートし得ることが確認された(査読中).
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は補足運動野に対するtSMSは,予測性姿勢調節機能を変化させること(Tsuru et al, Neuroscience Letters, 2020),また側頭葉に対するtSMSはタキストスコープ線分分割課題で評価される空間認知機能を変化させることを明らかにしてきた(Kirimoto et al, Brain Sciences, 2020).これに続いて,2020年度は,背外側前頭前野に対するtSMSの結果,難易度が低いGo/NoGo課題のパフォーマンスは変化しないが,ワーキングメモリ機能の指標であるNバック課題遂行時の事象関連電位の潜時は遅延することを報告した(Watanabe et al, Brian Sciences, 2021).以上のことより,一次感覚運動野以外の脳領域に対するtSMSの介入効果の検証は,計画通りに進行していると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では従来型の脳刺激法と比較して経済性,安全性,操作性において圧倒的に優れたtSMSの介入効果の安定性,及び刺激部位と関連のある領野との相互結合性(コネクティビティ)の変化の特性を明らかにすることを目的とする.2019-2020年度は,tSMSは,反復磁気刺激や直流電流刺激といった従来の非侵襲的脳刺激法の,一部代替ツールになりうるという結果を示してきた.残り2年間では,背外側前頭前野にtSMSを行い,その前後で複雑な認知課題を実行する際の脳活動を多チャネル脳波計で記録し,課題遂行な脳領域の同期律動活動様式,及び領域間の機能的結合の変化を解明する研究を進める.
|