研究課題/領域番号 |
19H03982
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研究機関 | 上武大学 |
研究代表者 |
井田 博史 上武大学, ビジネス情報学部, 准教授 (20392194)
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研究分担者 |
竹内 成生 上武大学, ビジネス情報学部, 准教授 (10329162)
関口 浩文 上武大学, ビジネス情報学部, 教授 (20392201)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 立位バランス / ヴァーチャルリアリティ / 予測性・代償性姿勢調節 / 経頭蓋磁気刺激 / 姿勢性恐怖 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ヴァーチャルリアリティにおける姿勢性恐怖と立位・歩行バランス制御の関係について,高所環境への適応効果(馴化)の検証も含めて,神経生理学的評価にもとづいて解明することである.特に,姿勢の崩れに応じる予測性・代償性姿勢筋活動,および経頭蓋磁気刺激で導出される皮質脊髄路入出力特性の2つの神経生理指標を含めて姿勢応答を評価する.到達目標として以下の3つを掲げる. 目標G-1:ヴァーチャル高所での立位バランスを理解する 目標G-2:ヴァーチャル高所での歩行バランスを理解する 目標G-3:ヴァーチャル環境曝露による高所馴化を検証する 目標G-1において,両脚静止立位保持を運動課題とし,ヴァーチャル高所における経頭蓋磁気刺激応答を検証する被験者実験を完了した.実験に使用したヴァーチャル環境が高さの主観的印象を変容させることが分かっており,皮質脊髄路入出力特性においても何らかの影響が発現すると見込んでいる.一方,代償性姿勢調節の筋活動を評価する外乱応答実験については,本実験を完了するには至らなかったものの,経頭蓋磁気刺激応答実験で用いた視覚刺激を準用する方針を定めた.目標G-2では,静止立位からの片脚挙上を運動課題とする内乱応答実験を前年度までに完了しており,予測性姿勢調節を評価するための解析プログラムを用いてデータ解析に着手した.これまでに,ヴァーチャル環境では予測性姿勢調節の筋活動が低減すること,また空間サイズに対する知覚歪みが生じることを示唆する結果を得ており,これは新規性の高い発見である.目標G-3については,目標G-1および目標G-2で得たノウハウから高所環境曝露の手順について方針を定め,今後の被験者実験により高所馴化効果が明らかになると期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標G-1において,経頭蓋磁気刺激応答実験を完了したこと,またその半数分について皮質脊髄路入出力特性を求めるためのデータ解析を完了したことは順調な進展であった.一方で,新型コロナウイルス感染拡大を考慮して外乱応答実験を延期したことで一部計画に遅れがあったが,その期間中に作成した筋反応時間を同定する解析プログラムは,今後のデータ解析に活用できる可能性がある.この解析プログラムは,本研究課題の派生的研究にあたるヴァーチャル環境での上肢運動を調べた実験データに適用され,そこで得られた発見は本研究課題に対して多くの示唆を含むものであった. 目標G-2では,ヴァーチャル環境と実環境とでは予測性姿勢調節の筋活動が異なることを示唆する結果が得られており,その一部は研究成果として公開する段階に入っている.またヴァーチャル高所環境の効果検証にも着手しており,今後姿勢筋活動に加えて,足圧中心軌跡と下肢動作キネマティクスのバイオメカニクス的分析,さらに主観的印象と皮膚電気活動の心理学的分析を実行する段階まで到達した. 目標G-3についても,新型コロナウイルス感染拡大の影響により予備実験の計画に遅れが生じたが,目標G-1と目標G-2の被験者実験で得たノウハウをもとに,高所馴化のための環境曝露方法の方針が定められた.また,すでに構築済みの実験系設定と解析プログラムを準用できるため,次年度の本実験に円滑に移行できると見込まれる.
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今後の研究の推進方策 |
目標G-1のうち,経頭蓋磁気刺激応答実験については,未了となっている残り半数分のデータ解析を次年度第2四半期中に完了させ,その後直ちに結果をまとめ成果公開の準備を進める.なおこのデータ解析にあたっては,研究代表者が指導にあたるゼミ学生を研究補助者として採用する.一方外乱応答実験においては,まず外力印加のために使用する磁気式牽引装置の操作に習熟し,次年度第2四半期中に本実験を完了させる.この実験においても指導にあたる別のゼミ学生を研究補助者として採用する.その後年度末までを目処に代償性姿勢調節の筋活動応答に関するデータ解析を終え,引き続き次々年度の成果公開に向けて結果をまとめる作業に取りかかる. 目標G-2においてすでに結果がまとめられているデータについては,次年度早期に論文原稿の最終確認をして学術誌に投稿する.またヴァーチャル高所環境の効果検証については,次年度第1四半期中にバイオメカニクス的分析と心理学的分析を含めたデータ解析を行い結果をまとめる.得られた成果は次年度中に開催される学会大会で発表することを予定しており,研究組織内外での議論を通じて,今後の研究展開を考案するための示唆を求める. 目標G-3については,次年度夏季休業中に本実験を開始し第3四半期中を目処に実験を完了させる.ここでも指導するゼミ学生には実験補助およびデータ解析補助を依頼する.年度末までを目処にすべてのデータ解析を終え,本研究計画の最終年度となる次々年度に成果公開を行うための準備を進める.
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