研究課題/領域番号 |
19H03985
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
小野 弓絵 明治大学, 理工学部, 専任教授 (10360207)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ニューロフィードバック / BMI / 脳卒中 / 多感覚 / 適応型リハビリテーション |
研究実績の概要 |
COVID-19の状況が多少緩和されたため,共同研究先病院の協力を得て,2021年度の後半に臨床実験を再開することができた。2021年度はこれまで医用脳波計とPCを用いて提供していたDMB2.0システムをより低コストな簡易型脳波計とタブレット端末に移植し,患者が自宅やデイサービスで自立的に利用可能なリハビリテーションシステムの構築を進めていくことを目的とした。 これまでの研究において,ニューロフィードバック訓練で用いる運動関連脳活動指標のevent-related desynchronization (ERD)の不安定性が課題となっていた。ERDは安静時と運動想起時のμ波帯域パワーの減衰比を利用しているため,脳卒中患者は麻痺肢に慢性的な筋緊張を伴うことが多く、μ波帯域のパワー値が低く安定しない特徴がある。そのため計測されるERD強度も不安定で小さくなる場合が多く、患者の運動野活動の正確な評価ができないばかりか、患者が努力して取り組んでもERD強度が思うように増加せず、リハビリテーションへの意欲を失ってしまうという症例が散見されていた。そこでDMB2.0システムでは安静時の脳波強度が一定閾値を超えて持続したときに運動想起の合図を提示するようにした。この改良により,患者が自らμ波帯域の脳波強度を高く保つ訓練を行うことで麻痺肢の筋緊張の低下につながり,かつその状態から運動課題を行うことによってμ波帯域の減衰可能範囲を十分に確保し,ERD表出能力の正確な評価が実現できる。2021年度はこの改良法を用いて,健常者による予備的検討と脳卒中片麻痺患者に対するニューロフィードバック訓練を行った。その結果,提案法では従来法と比較して安静時μ波パワーやERD強度が増加し,より的確な運動関連脳活動の評価が可能となることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響により症例データの取得が十分に行えなかったため,DMB2.0システムの臨床効果の研究に遅れが生じている。その一方で,安静時脳波活動に着目したブレイン・マシン・インターフェース(BMI)システムの改良と検証実験を行うことができたことは大きな進歩だと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
協力病院内での症例データ取得環境が整い次第,2021年度までに確立したリハビリテーションシステムの臨床効果をランダム化比較試験により検討する。また,マイコンを組み合わせて作成してきた動画提示・感覚フィードバック制御装置についても,専門の業者に小型化を依頼し,院内で使いやすい形状・インターフェースに改良を進めていく。
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