研究課題
身体不活動の状況が長期間にわたり継続すると、骨組織に対する力学的負荷(メカニカルストレス)のため骨量は著しく減少し、不動性骨粗しょう症を発症する。この骨量減少は、骨組織のメカニカルセンサー細胞である骨細胞における破骨細胞分化因子RANKLの発現亢進に大きく依存すると考えられていた。しかし、不動性骨粗しょう症を発症させたモデルマウスにメカニカルストレス負荷を行うと骨組織のRANKL発現の変動に先立って破骨細胞数が減少することを見出したことから、本研究では破骨細胞に対するメカニカルストレスの直接的な影響の重要性ならびに破骨細胞減少の分子メカニズムを解明し、骨粗しょう症の新規治療法の確立を図る。今年度はin vitro破骨細胞培養系を利用した剪断応力(シアストレス)負荷の実験系構築ならびにこれに応答して破骨細胞の分化や機能、生存を制御する分子メカニズムについて破骨細胞で発現が認められるGタンパク質共役7回膜貫通型受容体(GPCR)に注目した解析を行った。これまで使用していたシアストレスを負荷する培養用チャンバーでは解析できる細胞数が少なく生化学的・分子生物学的解析が難しいことに加えて、無菌状態での長時間培養が不可能であったため、これらの問題点を解決する35mm細胞培養ディッシュ上でシアストレスを付加する培養系の確立を行った。一方、破骨細胞におけるGPCRの機能を解析するためのGPCR欠損破骨細胞前駆細胞株の作成を行った。CRISPR/Cas9システムを利用し、今回注目しているGPCRの遺伝子を欠損させた細胞株の樹立に成功した。このGPCR欠損細胞を用いてin vitroにおける破骨細胞分化培養系で培養したところ、野生型細胞と同様に破骨細胞を形成し、破骨細胞分化には関与していないことが判明した。現在、この遺伝子欠損細胞に対してシアストレス負荷した際の影響について解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
本研究において重要な位置を占めるin vitro培養系でのシアストレス負荷実験系を確立することができ、また実験に使用する遺伝子欠損細胞株を樹立できたことから、研究は順調に進捗していると考えられる。
当初の計画に従って、遺伝子欠損細胞に対してシアストレス負荷実験を行い、破骨細胞に対するアポトーシス誘導効果や骨吸収能の変化について解析を行う。その後、in vivoにおける遺伝子機能を確立するための遺伝子欠損マウスの作成に着手していく。並行して、他のGPCRについても解析を進めていき、現在注目している遺伝子以外の機能についても明らかにしていく。
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Sci Adv
巻: 5 ページ: eaau7802
10.1126/sciadv.aau7802