身体不活動の状況が長期間にわたり継続すると、骨組織に対する力学的負荷(メカニカルストレス)の減弱ため骨量は著しく減少し、不動性骨粗しょう症を発症する。この骨量減少は、骨組織のメカニカルセンサー細胞である骨細胞における破骨細胞分化因子RANKLの発現亢進に大きく依存すると考えられていた。しかし、不動性骨粗しょう症を発症させたモデルマウスにメカニカルストレス負荷を行うと骨組織のRANKL発現の変動に先立って破骨細胞数が減少することを見出したことから、本研究では破骨細胞に対するメカニカルストレスの直接的な影響の重要性ならびに破骨細胞減少の分子メカニズムを解明し、骨粗しょう症の新規治療法の確立を図る。 最終年度は、メカニカルストレスの一つであるシアストレスによる破骨細胞分化抑制に重要なGPCRの機能解明を図るとともに、ノックアウトマウスを用いて個体レベルでメカニカルストレス減弱に伴う骨量減少におけるGPCRの重要性を明らかにすることを目的とした。破骨細胞分化培養系でマウス由来骨髄細胞を破骨細胞へ分化誘導し、分化後における破骨細胞に特徴的な遺伝子の発現を解析したところ、破骨細胞分化抑制が起こるメカニカルストレスを負荷した際に発現が低下することを見出した。また、GPCRの発現を抑制した細胞を用いて解析を行ったが、顕著なメカニカルストレス負荷による破骨細胞に特徴的な遺伝子の発現に変化は認められなかった。GPCRの発現抑制が十分でなかったことから、ノックアウトマウス作成を待ち、ノックアウトマウス由来の細胞を用いて解析することとした。 ノックアウトマウス作成については、CRISPR/Casによるゲノム編集技術により作成し、5個体のヘテロノックアウトマウスの作成に成功した。現在、ノックアウトマウスの骨組織の表現型解析を実施している。
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