研究課題/領域番号 |
19H04001
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
中本 浩揮 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 准教授 (10423732)
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研究分担者 |
福原 和伸 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 助教 (10589823)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 知覚 / 予測 / 運動制御 |
研究実績の概要 |
スポーツで優れたパフォーマンスを発揮するためには,身体能力(筋力や持久力:末梢機能)に加え,情報処理能力(情報収集,予測,運動命令の企画・修正:中枢機能)の発達が不可欠となる.特に,厳しい時間制約と高い不確実性を含むスポーツでは,「予測能力」を高度に発達させることが重要である. 本事業では,予測能力を最適に評価する課題を開発し,大量データを取得した上で,予測能力の診断基準を作成し,予測の量的発達 (予測精度の向上) と質的発達 (メカニズムの変化) の関係を明らかにし,予測の診断・処方システムの開発につなげることを目的としている. 本年度は,アスリートの予測メカニズムとして,運動シミュレーションおよびベイズ統合的知覚について検証した.前者に関しては,他者の運動結果の予測に自己の運動システム,特に筋運動感覚情報を利用しているという仮説を検討した.実験では参加者に他者の運動結果を予測させる課題を行わせた.その際,観察運動と同部位の腱を振動刺激することで筋運動感覚を誘発した.その結果,熟練者は,観察運動と同部位を刺激された場合,予測は低下し,異部位を刺激された場合,予測は維持された.このことから,熟練アスリートは他者の運動結果の予測のために,自己の運動システム,特に筋運動感覚をシミュレーションすることで高い予測を実現できることが示された. 後者のベイズ統合に関して,熟練者が移動物体を知覚し予測する際には,事前情報(他者の動作情報)と現在情報(ボール軌道)の両者を,双方の情報の尤もらしさに従って重みづけて統合的に知覚するという仮説を検証した.結果として,熟練者は情報の信頼性に応じて両者を統合したが,そのような特徴は未熟練者には認められなかった.このことから予測は単一の情報ではなく,複数の情報を信頼性に応じて統合することで実現されることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本事業では,予測の量的発達 (予測精度の向上) と質的発達 (メカニズムの変化) の関係を明らかにすることである.本年度は,そのメカニズムとして,熟練者は他者の運動結果を予測するために,自己の運動システムを利用するという運動シミュレーション仮説,および熟練者は複数情報を信頼性に応じて統合することで予測するというベイズ統合的予測仮説の2つを検証し,いずれの仮説も熟練者の予測を支えるメカニズムであることを明らかにすることができた.ただし,量的発達との関係は明確でないため,おおむね順調と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
予測の量的発達 (予測精度の向上) と質的発達 (メカニズムの変化) を解明するために,より多くの参加者を同じ評価システムで測定し,両者の関係を明らかにする必要がある.そのため,ヴァーチャルリアリティでの評価システムを確立し,大量データを取得したうえで,実験室研究(メカニズム変化)との関連を明確にしていく.
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