研究課題
健康寿命延伸の鍵を解明するために、全身持久力と下腿周を組合せてプレ糖尿病および糖尿病有病率に関する交互作用解析を行い、生活習慣病のリスク因子と考えられる低全身持久力の背後に存在するメカニズムを明らかにすることを試みた。また、新たなリスク因子として低歩行速度とプレ糖尿病および糖尿病有病率の関係を調査した。(1)全身持久力と下腿周の組合せと糖尿病有病率の関係:男性597人を対象に全身持久力と下腿周でそれぞれ2群に分類し、全身持久力低値群&下腿周低値群(低低群)、低高群、高低群、高高群を設定した。そして、ロジスティック回帰モデルを用いて交絡因子を調整したうえで、低低群を基準にした場合の他の群のオッズ比を算出した。低低群を基準にした場合の他の群のオッズ比は低高群0.47、高高群0.31であった。全身持久力と下腿周を組み合わせた場合、両者とも高い値を示す群の糖尿病有病率が最も低いオッズ比を示していた。(2)。最大歩行速度と生活習慣病有病率の関係:男性523人、女性278人を対象に調査を行った。研究参加者が高血圧、糖尿病、脂質異常症のいずれかの疾患を持っている場合に生活習慣病有病者と定義した。研究参加者を、6mの距離を歩行して測定した最大歩行速度で三分位に分類し、ロジスティック回帰モデルを用いて最大歩行速度が最も速かった群(第1三分位群)を基準にした場合の第2三分位群および第3三分位群の性年齢調整オッズ比を算出した。最大歩行速度の第1三分位群を基準にした場合の第2および第3三分位群のオッズ比は1.32 、1.48であった(トレンド検定=0.042)。本研究において、中高齢男女を対象に最大歩行速度と生活習慣病有病率の関係を調査した結果、統計的に有意な関係は観察されなかったが、最大歩行速度が遅くなるほど生活習慣病有病率のオッズ比が高くなる可能性が示唆された。
3: やや遅れている
新型コロナ感染症拡大のために2020年度は測定を実施する期間が限定的であったことから研究参加者数が想定していたほど増えなかった。また、重要なリスク因子である身体活動量および座位行動時間のデータ整備に想定以上の時間が必要となっており、これらの情報を解析に使用するためにはさらなる時間が必要な状況である。一方で、Dコースにおいてすでに調査済みのデータを使用した横断研究については順調に健康アウトカムと健康寿命の延伸を阻害する既知のリスク因子の関係や未知のリスク因子の関係を評価できており、そのいくつかについてはすでに学会発表や論文発表を終えている。
新型コロナ感染症の状況を考慮しながら研究参加者を増やしていくとともに、身体活動量および座位行動のデータ整備を至急進め、さまざまなリスク因子の影響度(ハザード比の点推定値)を比較し、影響度の強いリスク因子を明らかにするとともに、リスク因子と年代や性別の積項を解析モデルに投入し、交互作用解析を網羅的に実施していく。Dコースのデータを使用した横断研究については、本年度の解析結果を論文として公表していくとともに、さらに多くのリスク因子を探索していく。
すべて 2020 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件) 備考 (2件)
Geriatr Gerontol Int
巻: 20 ページ: 943-950
10.1111/ggi.14025
PLoS One
巻: 15 ページ: e0241018
10.1371/journal.pone.0241018
https://sites.google.com/site/sssawadalab/
http://www.waseda.jp/prj-whs/index.html