研究課題
健康寿命延伸の鍵を解明するために、中高齢者の安静時酸化ストレスを規定する因子の特定に取り組んだ。これまでの研究では、体力も含めた安静時酸化ストレスの規定因について、酸化還元制御に関連した検討は行われていない。そこで本研究は、客観的に測定した体力(脚伸展力及び心肺体力)を含め、安静時酸化ストレスを決定する生活習慣および生物学的因子を明らかにすることを目的とした。中高年男女873名を対象に、年齢・身体計測値・生活習慣関連指標・投薬やサプリメントの摂取状況・心肺体力・生化学パラメータ・栄養摂取状況・血漿酸化ストレスマーカーであるプロテインカルボニル(PC)・F2-アイソプロスタン(F2-IsoP)・チオバルビツール酸反応物質(TBARS)について調査・測定した。全参加者のPC・F2-IsoP・TBARSの規定因子をステップワイズ重回帰分析で特定した。PCについては、年齢(β = -0.11)・脚伸展力(β = -0.12)・BMI(β = 0.12)・HDL-C(β = 0.08)が抽出された(調整R 2 = 0.018).F2 IsoPについては、喫煙状況(β = 0.07)・BMI(β = 0.07)・HbA1c(β = -0.06)が抽出された(修正R 2 = 0.006)。TBARSでは、グルコース(β = 0.18)・CRF(β = 0.16)・年齢(β = 0.15)・TG(β = 0.11)・抗酸化物質補給(β = 0.10)・HbA1c(β = -0.13)が抽出された(修正R 2 = 0.071)。本研究の結果、年齢・身体計測指数・ライフスタイル関連パラメータ・投薬やサプリメントの摂取状況・体力・生化学パラメータ・栄養摂取状況による安静時の酸化ストレスの説明が10%未満であることが示された。
3: やや遅れている
新型コロナ感染症拡大のために2021年度は測定を実施することができなかった。また、重要なリスク因子である身体活動量および座位行動時間のデータ整備に想定以上の時間が必要となっており、これらの情報を解析に使用するためにはさらなる時間が必要な状況である。一方で、Dコースにおいてすでに調査済みのデータを使用した横断研究については2020年度と同様に順調に健康アウトカムと健康寿命の延伸を阻害する既知のリスク因子の関係や未知のリスク因子の関係を評価できており、引き続いて論文として発表している。
新型コロナ感染症の状況を考慮しながら測定を再開するとともに、身体活動量および座位行動のデータ整備を至急進め、さまざまなリスク因子の影響度(ハザード比の点推定値)を比較し、影響度の強いリスク因子を明らかにするとともに、リスク因子と年代や性別の積項を解析モデルに投入し、交互作用解析を網羅的に実施していく。Dコースのデータを使用した横断研究については、2022年度についても解析結果を論文として公表していくとともに、さらに多くのリスク因子を探索していく。
すべて 2021 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 備考 (2件)
Oxid Med Cell Longev
巻: 7 ページ: 5566880
10.1155/2021/5566880
BMC Public Health
巻: 22 ページ: 626
10.1186/s12889-022-12971-x
https://sites.google.com/site/sssawadalab/
http://www.waseda.jp/prj-whs/index.html