研究課題/領域番号 |
19H04012
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
檜垣 靖樹 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (10228702)
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研究分担者 |
道下 竜馬 福岡大学, スポーツ科学部, 准教授 (10632028)
冨賀 裕貴 福岡大学, 公私立大学の部局等, ポスト・ドクター (50826394)
上原 吉就 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (70373149)
安野 哲彦 福岡大学, 医学部, 講師 (80551994)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 一酸化窒素合成酵素 / メチル化 |
研究実績の概要 |
マウスに対する高脂肪食負荷及び運動トレーニングの併用がうつ・不安といった情動とその関連分子に及ぼす影響を検討した.まずマウスを,通常食(SD, 14% fat) 群, 高脂肪食群 (60% fat) の2群に分類し,6週間飼育した.その後高脂肪食群のマウスは,非運動 (HFD) 群及び回転ホイールを用いた自発走行運動を併用する (HFD+Ex) 群に分類され,さらに6週間飼育し,合計12週間の介入を実施した.12週間の介入中の経時的な変化を評価するため,HFD初期, HFD中期,運動初期,運動長期(それぞれ介入開始後2, 6, 7, 12週間)の4時点でマウスを屠殺し,海馬組織をサンプリングした.マウスの屠殺3日前に,高架式十字迷路テストを用いて不安様行動を評価し,神経型一酸化窒素合成酵素 (nNOS) とそのシグナル伝達に関連するタンパク質発現量を定量化した. HFD群では介入2週間後から顕著な体重と内臓脂肪重量の増加が認められた.介入7週間時点において,運動介入1週間後ではHFDによる体重および内臓脂肪重量の増加に影響を及ぼさなかったが,6週間の運動介入は,HFDによる体重と内臓脂肪重量の増加を抑制した.HFD摂取2週間後では海馬nNOS量は変化しなかったが,Aktリン酸化レベルの増加を伴う一時的な不安様行動の増加が認められた.HFD摂取6週間後ではこれらの変化は認められなかった.HFD摂取7週間後では,海馬nNOS量は増加し,1週間の運動によるこれらの抑制効果は認められなかった.一方で12週間のHFD摂取と運動トレーニングの併用は,HFD誘発性の海馬nNOS量の増加を抑制し,それに伴って不安様行動を改善した.これらの海馬nNOS量の調節が,DNAメチル化による遺伝子発現修飾により制御されているか検討した.その結果,4時点において,各群間で有意な変化は認められなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に計画していたマウスに対する高脂肪食負荷および運動トレーニング併用が、うつ・不安といった情動とそれらを制御する候補因子として一酸化窒素合成酵素のシグナル伝達系を検討し、いくつかのエビデンスを得たころから、概ね順調に進展していると評価した。 特に、メチル化解析においては、解析の精度管理と検体数の妥当性を考慮しながら、計画的に実施した。すなわち、定量化解析に耐え得る検量線の理論値と実測値の精度管理、分析の日差変動など、あわせて検討を加えた。
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今後の研究の推進方策 |
今回の解析組織は海馬を中心に行ったが、筋肉、肝臓、腎臓、脂肪組織、海馬以外の脳組織など、解析していく予定である。特に、運動刺激による一酸化窒素合成酵素の生体の役割は、骨格筋などの抹消組織と海馬を代表とする中枢組織では異なることを想定している。それらの制御機構を明らかにしていくために、多様なサンプル解析を行い、それらを統合して考察していきたい。 また、昨年度と同様に、メチル化解析においては、解析の精度管理と検体数の妥当性を考慮しながら、計画的に実施する。
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