研究課題/領域番号 |
19H04012
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
檜垣 靖樹 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (10228702)
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研究分担者 |
道下 竜馬 福岡大学, スポーツ科学部, 准教授 (10632028)
冨賀 裕貴 佐賀大学, 医学部, 助教 (50826394)
上原 吉就 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (70373149)
安野 哲彦 福岡大学, 医学部, 准教授 (80551994)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メチル化 |
研究実績の概要 |
運動トレーニングによる適応は比較的早期に起こると言われるが、その分子メカニズムは不明な点が多い。そして、適応の記憶は、活動筋の核に残されるか、あるいは活動筋の幹細胞に残されるか、不明である。本年度は、令和2年度の研究データに基づき、トレーニングを課した骨格筋から採取した筋幹細胞を用いて研究を進めた。実験には、C57BL/6Jマウス(雄、8週齢)を用い、11日間の回転ホイールによる自発的運動トレーニングを行った。対照群は、回転ホイールへの侵入をブロックした飼育ゲージにて同様に11日間飼育した。 介入後、両群(運動群・対照群)のヒラメ筋、足底筋、腓腹筋、精巣上体脂肪、肝臓を摘出し、重量を測定した。ヒラメ筋、足底筋、精巣上体脂肪、肝臓よりQIAamp DNA Mini Kitを用いてDNAを抽出した後、バイサルファイト処理し、非メチル化シトシンをウラシルに変換した。メチル化シトシンはウラシルに変換されないため、バイサルファイト処理で生じるシトシンとチミン(ウラシル)の差異をパイロシークエンス法により定量化した。また、腓腹筋より、筋幹細胞は、プレプレーティング法により単離した。細胞培養4日及び培養5日+分化1日目で回収した筋幹細胞から静止状態筋幹細胞マーカーであるPax7、DAPI、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)の免疫組織化学染色を行い、発現パターンを評価した。 11日間の運動は脂肪(精巣上体脂肪)を減少させ、体重の増加を抑制した。骨格筋においてはヒラメ筋において筋重量が有意に増加した。nNOS DNAメチル化レベルにおいてはヒラメ筋、足底筋、肝臓においてnNOS 全体のDNAメチル化レベルは変化を認めなかった、精巣上体脂肪において減少傾向が見られた。また、筋幹細胞における免疫組織学染色の結果では、11日間の運動による顕著な変化を認めなかった。現在、nNOSの遺伝子発現およびDNAメチル化の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に計画した実験について、概ね予定通りに進み、解析結果も得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として、これまでの動物実験結果に加え、ヒトを対象とした運動実験を行う。具体的には、中高齢者を対象に自転車エルゴメータによる漸増運動負荷試験を行い、一過性の運動によるエビジェネティック修飾について検討する予定である。メチル化解析については、血液バフィーコートよりDNAを抽出し、パイロシークエンス法およびビーズアレイにてメチル化の程度を定量化する。パイロシークエンス法については、抽出したDNAサンプルを、まずバイサルファイト処理した後、PCR法により定量化する。候補遺伝子は、神経型一酸化窒素合成酵素を予定している。また、ビーズアレイ解析を行い、メチル化の網羅的解析も実施する予定である。 動物モデル実験については、これまでに得られたサンプルを用いてメチル化解析を継続する。また、筋から摘出した幹細胞の検討については、C57BL/6Jマウスを用いて、引き続き11日間の自発運動群と対照群を設定して進める。
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