研究課題/領域番号 |
19H04014
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
尾嶋 孝一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 上級研究員 (60415544)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カルパイン / 骨格筋 |
研究実績の概要 |
本研究では骨格筋特異的に発現するカルパイン3に着目し、カルパイン3がどのようにして運動ストレスを感知し、どのような基質を切断し、切断した基質に対してどのような機能を付与することで運動ストレスから防御するのか、という点を解明することを目的とする。 これまでに、培養細胞系における運動刺激モデルである培養骨格筋細胞に電気刺激を負荷する系において、カルパイン3の活性化をモニターした結果、負荷する電気刺激のパターン、強さ、負荷時間と、カルパイン3自己消化断片の出現パターンには関連がありそうなので、再度精査する。昨年度作出した抗体(カルパイン3が自己消化したときに生じる断片を特異的に認識する抗体)の反応性が乏しかったため、本年度も抗体のエピトープを変えて再度作出を行った。しかし、この抗体もイムノブロットには使えるが免疫沈降には使えなかった。 一連の研究の過程でカルパイン3が基質とする筋原線維性タンパク質を見出したが、カルパイン3特異的な切断であるのか、あるいは組織普遍的なカルパイン1およびカルパイン2でも基質になるのかを今後詰める必要がある。さらに、培養細胞系における運動刺激モデルとして培養骨格筋細胞に電気刺激を負荷する系において、この基質タンパク質が切断されるのかを調べる必要がある。さらに、in vitroの運動モデルの結果がin vivoのマウスの運動負荷モデルにおいても同様の結果が出るのかを検証する。運動負荷をかけたマウス骨格筋を採取し、カルパイン3およびその基質候補の動態を、イムノブロット等で調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2か月間新型コロナウイルスのせいで在宅勤務になったため、ウェットな実験を行えなかった。しかし、その期間に論文執筆を進めBiol Openという雑誌に掲載されたのは不幸中の幸いであった。一昨年度、カルパイン3が自己消化したときに生じる断片を特異的に認識する抗体をウサギで作製し抗血清をアフィニティー精製した。しかし、抗体の反応性があまり良くなかったので、昨年度も抗体の抗原部位を変えて同様の方法で再度作出した。しかし、この抗体もイムノブロットには使えるが免疫沈降には使えなかった。培養骨格筋細胞に電気刺激を負荷する運動負荷モデルにおいて、電気刺激のパターン、強さおよび刺激時間の組み合わせを変えて行った。カルパイン3の自己消化断片の有無を指標としてイムノブロットにて確認した。
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今後の研究の推進方策 |
カルパイン3の基質となる筋原線維性タンパク質を見いだせたので、基質のどのアミノ酸残基で、CAPN3により切断されるのかを質量分析、あるいはアミノ酸シークエンサーを用いて特定する。また、この基質はカルパイン3特異的な基質であるのか、あるいは組織普遍的なカルパイン1およびカルパイン2においても酵素学的な基質になるのかを培養細胞を用いて検討する。 実験室での実験ができるうちに培養細胞の実験に区切りをつけて、in vitro培養細胞系で得られた結果が、マウスに運動負荷をかけるin vivoの実験に移りたい。運動負荷をかけた骨格筋をサンプルとして、これまでに得たin vitroで行った実験系の結果と一致するのかを検証する。つまり、マウスに運動負荷をかけたのちに骨格筋を採取し、電気泳動およびイムノブロットにて、カルパイン3の自己消化および候補基質の切断の有無を確認する。対照群として酵素活性不全のカルパイン3を野生型カルパイン3の代わりに発現するマウスを用いて行う。 研究計画に沿って研究を進める予定であるが、新型コロナウイルスの感染状況が好転するとは思えないため、在宅勤務が発令される可能性がある。その場合は実験室で行う予定の実験ができなくなるので、計画通りに進まない可能性がある。
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