研究課題/領域番号 |
19H04015
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
橋詰 賢 立命館大学, スポーツ健康科学部, 助教 (50727310)
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研究分担者 |
小林 吉之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (00409682)
保原 浩明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (40510673)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 多層データベース / 運動解析 / 医用画像 |
研究実績の概要 |
ランニング愛好家が増加している昨今において,年間7-8割のランナーが苦しむランニング関連障害リスクの解明は危急の課題である.これまで既に障害を有するランナーを対象とした実験室環境における障害発症の”結果”に焦点を当てた研究は広く行われてきたものの,障害がなぜ,どのような条件・状況で起きたのかという実運動環境における障害発症の”過程”に関する研究は極めて少なく,さらに両環境計測を組み合わせた計測および研究は皆無である.実験室環境における高次元なデータと実運動環境における低次元なデータによる多層データベースを構築し,低次元データを用いた高次元データの復元技術を開発・応用することで,実運動環境におけるランニング関連障害発症リスクの解明を行うことを目的とする.ランナーを含む成人男性を対象とし,実験室環境におけるランニングの運動データの収集および解析を行った.収集したデータを用い,骨格筋の損傷を引き起こす各下肢関節への力学的負荷を算出し,その個人差を引き起こす力学的要因について多変量解析を行った.結果,運動力学データのみならず運動学データもまた,力学的負荷の個人差の要因であることが示された.これは低次元データを用いた高次元データ復元の可能性を示すものである.また運動力学データの収集には大型の計測装置が必要不可欠である一方,運動学データの収集は小型の計測装置で可能であることから,実運動環境での障害発症リスク評価の実現可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は,ランニングの高次元データベースの構築を目指し,実験室環境での高次元な運動データの収集・解析を行った.のべ50名以上の高次元な運動データの収集を行い,得られたデータの解析により,低次元データを用いた高次元データの復元可能性を示すデータが得られた.以上の理由につき,計画通りの成果が得られているため,おおむね順調に進展していると判断出来る.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究では,実験室環境におけるランニングの運動データについて収集および解析を行うことで,骨格筋損傷に関わる物理量の評価を関節レベルで実施した.そこで2020年度の研究では,2019年度の研究を発展させ,関節レベルで評価した物理量と,関節運動に関連する個々の骨格筋の損傷状態を示す物理量の関係の評価を目的とする.骨格筋は損傷が生じることで,炎症反応による浮腫が発生する.浮腫の発生により骨格筋の内圧が高まるため,硬さを示す物理量であるstiffnessが高くなると考えられる.浮腫の発生については磁気共鳴撮像装置(MRI)を用いたT2(横緩和時間)強調画像によって,また骨格筋のstiffnessについては超音波診断装置を用いた剪断波elastographyによって評価可能である.下肢関節へ一定のnegative workを負荷する前後で,T2強調画像から算出した骨格筋のT2値の変化,および剪断波の伝播速度から算出した骨格筋stiffnessの変化を算出する.関節へ負荷したnegative work,骨格筋のT2値の変化,骨格筋stiffnessの変化の関係を明らかにすることで,関節レベルという低次元データから,骨格筋レベルという高次元データを復元するためのアルゴリズム構築が期待できる.
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