研究課題/領域番号 |
19H04021
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
槌谷 和義 東海大学, 工学部, 教授 (50399086)
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研究分担者 |
樺山 一哉 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (00399974)
砂見 雄太 東海大学, 工学部, 講師 (10709702)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱中症 / pHセンサ / 貼付 / 連続測定 |
研究実績の概要 |
地球温暖化により気温35 °C以上の猛暑日の日数が年々増加している。マスコミや地方公共団体が熱中症に対する警戒を呼びかけているにもか かわらず、その死亡人数は増加の一途をたどっている。通常pH(水素イオン指数)酸性側にに調整されている体表面近傍にある細胞外液が、熱中症では長時間の体温上昇によって減少し、pHが0.1程度アルカリ性側に変化ことが知られている。本研究では、体表面のpHおよび温度を直接測定することで、死に至るケースが多い隠れ熱中症を検出できる皮膚貼付型熱中症フレキシブルセンサを開発することを主目的とする。具体的には、超薄膜創成技術、材料設計技術、表面修飾技術、および生体適合性評価技術を融合することで、暑さ指数と個人レベルでの体表面の変化との関連性について考察可能な、連続的に生体情報の変化を観察できる皮膚貼付センサシステムの構築を目的とする。 そこで本年度は、下記の2点について研究を遂行し、以下の知見を得た。 ナノシートの粉末状固体電極含有量の最適化について:変動係数を最低限の変化にとどめ、AgIO3粉末量、表面積を変化させ、その感度について評価を行った結果、密度の高いセンサの方がセンサ感度が高いことを確認した。 固体電極や導電性高分子電極を含むナノシートの作成手法の確立および暑さ指数モニタリング:創製したナノシート型pHセンサの電圧測定を行った結果、pHの変化に伴って電圧が変化し、安定して測定可能であることを確認。しかし、標準pHと電圧の関係式を用い汗のpH測定を行った結果、創製したセンサと市販のpHメータの値は異なる結果を示した。センサに影響を与えている汗に含まれる成分に対して検討の余地を残した。また、本学にて厚さ指数モニタリングのために、環境省と同じ精度のセンサの購入と設置場所の選定を無事終えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、医学・理学・工学者らの分野横断的な協働により遂行し、バッテリ、アンテナ、トランスミッタ等のハードウェアモジュールは、既存の半導体技術等によりナノシート上に構築することで、皮膚貼付型熱中症フレキシブルセンサを開発し、皮膚pHと熱中症との関係を解明するためのウエアラブルなセンサシステムの開発とする。研究期間は3年間とし、下記の4項目を明らかにする。 項目1:センサ機能を持つナノシートの作成およびその高機能化、項目2:デバイス化技術の確立 項目3:ナノシートの生体適合性、基礎物性 および機能評価、項目4:暑さ指数(WBGT)とナノシートセンサによるpHの相関性確認 今年度は、項目1および項目4の「ナノシートの粉末状固体電極含有量の最適化について」と「固体電極や導電性高分子電極を含むナノシートの作成手法の確立および暑さ指数モニタリング」を遂行した。今年度3月にACS Sensors にアクセプトされたことからも、計画通り研究が進捗している。しかし、項目1の「表面修飾設計」に関しては粉末状固体電極を含有する高分子薄膜のセンシング感度化として、ナノシートの表面への表面修飾設計を計画通り遂行した。設計したものを具現化するための加工をする予定であったが、新型コロナウィルスの影響で大学入構禁止となり、研究実施の延期を余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、医学・理学・工学者らの分野横断的な協働により遂行し、バッテリ、アンテナ、トランスミッタ等のハードウェアモジュールは、既存の半導体技術等によりナノシート上に構築することで、皮膚貼付型熱中症フレキシブルセンサを開発し、皮膚pHと熱中症との関係を解明するためのウエアラブルなセンサシステムの開発とする。研究期間は3年間とし、下記の4項目を明らかにする。 項目1:センサ機能を持つナノシートの作成およびその高機能化、項目2:デバイス化技術の確立、項目3:ナノシートの生体適合性、基礎物性 および機能評価、項目4:暑さ指数(WBGT)とナノシートセンサによるpHの相関性確認 今後は、項目2および項目3の下記の課題を遂行する予定である。(1) ヌードマウスに創成したナノシートを貼付し飼育した後に、皮膚障害の有無を組織学的に評価する系を構築する。ナノシートを貼り付けた 際の皮膚への刺激毒性を組織学的観点から解析するために、ナノシートを貼付したマウスの皮膚を採取し、パラフィン切片を作製する。HE(ヘ マトキシリンエオシン)染色および種々の免疫染色を行い、炎症反応の有無など、バイオイメージングにより皮膚の状態を評価する。(2) ナノシートの生体適合性、基礎物性 および機能評価として、基礎物性解析評価、マウス体表面でのpH変化と体温センシングに着手、また 引き続き暑さ指数モニタリングも行う。 さらには、昨年度延期せざるを得なかった、「表面修飾設計」に関する粉末状固体電極を含有する高分子薄膜のセンシング感度化としてのナノシートの表面への表面修飾設計についても、実施する予定である。
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