研究実績の概要 |
目的:本研究では、代謝―筋―循環呼吸機能といった統合生理について「歩行から走行への移行」の面より探求した。歩行と走行の移行速度(EOTS)、および移行速度以上の走動作におけるサイン波速度変化とを比較した。方法:被験者は20歳~28歳の健康な成人13名とした。プロトコールは3つであり、①トレッドミル上で速度2km/h~8km/hの範囲で歩行、7km/h~11km/hで走運動をおこなった。エネルギーコストは歩行では2次曲線となり、走動作から直線となる。この交点からEOTSを決定した。②EOTSを中心(基準)に±1.5km/h変動のサイン波負荷を実施した(歩・走混在型)。③EOTS+3km/hを中心(基準)に±1.5km/h変動のサイン波負荷を実施した(完全走型)。測定項目:①ガス交換(VT, Bf, VE, VO2, VCO2)、②心電図・心拍数(HR)、③筋電図(EMG:前脛骨筋、ヒラメ筋、腓腹筋の表面筋電図)を周波数解析によって各パラメータの振幅および位相差を算出した。結果と考察:グループのEOTSは7.42±0.62 km/h であり、「歩・走混在型」の速度変動は5.92~8.92km/h、「完全走型」の速度変動は7.42~10.42km/hであった。Bfの位相差から歩行―呼吸引込現象が確認された。「完全走型」では、VE,VO2、VCO2の位相差が類似し、HRの位相差は顕著に遅れた。HRの遅れを筋内酸素利用で補償していたと考えられる。前脛骨筋の速やかな筋活動(iEMG)の位相差が顕著に小さかったのはその証拠である。「完全走型」の特徴は、ベースが高くなることでガス交換や循環のすべての振幅は低下するが、前脛骨筋、ヒラメ筋、腓腹筋のiEMG のそれは高かった。これは、走運動での骨格筋の粘弾性エネルギーを利用していることを示唆する。
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