研究実績の概要 |
運動想起(motor imagery, MI)課題遂行中の脳機能マップから運動が想起された四肢を判別する脳活動を抽出し仮想的な運動学習を行わせるNF-fMRIシステムの最終評価を行った。学習データの逐次更新を行なう判別アルゴリズムにより判別精度が向上し、MIによる小型アンドロイドの操作性が両年齢群で改善された。加齢による脳活動領域の拡大が判別分析精度を低下させる可能性を予見していたが、拡大したクラスタ分布は個人内で十分な再現性が認められ、ランダムな神経組織動員では無く一定の学習方略に依存しており、統計的には寧ろ検出力を安定させる効果があると考えられた。若年者では動員される神経回路の最適化が早く進み、学習に動員された領域の脳活動が縮退するので検定力の向上には貢献しないが動作再現率は十分保たれた。此の様に高齢者と若年者で訓練される神経活動動態に差異が認められるが、BMIとしての用途には影響し無いと考えられた。以上の結果から、小型アンドロイドを介してMIを自らの身体座標感覚に視覚的にフィードバックさせる訓練は高齢者向け神経リハビリに応用可能と期待される。リアルタイム解析で取得可能な限られたサンプル数でも4クラス分類が可能であり、実用化の見通しを得た。國立精華大學(台湾)との共同研究で高齢者を対象とした4週間の言語訓練学習により、前頭葉―側頭葉、側頭葉―視覚野―小脳、海馬の神経結合が亢進する事が確認された(Front in Hum Neurosci 16, #786853, 2022, doi: 10.3389/fnhum.2022.786853)。今後は言語訓練課題等による神経結合の改善がMIによる身体座標感覚・運動変換訓練の短期的学習効果への影響を評価する介入モデルを構築し、運動・認知訓練処方の相互作用を検討する予定である。
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