研究課題
脂肪酸栄養および脂肪酸代謝分子の発達期および脳疾患における関与を明らかにする目的で、以下の実験を行い成果を得た。1)脊髄アストロサイトに発現する脂肪酸結合タンパク質(FABP7)の遺伝子欠損マウスに、実験的脳脊髄炎を誘導し解析を行った。その結果、本マウスでは、正常マウスに比べて症状の出現が早く、重症化しやすいことを明らかにした。さらにFABP7がアストロサイト由来のフィブロネクチン産生を介して再髄鞘化過程を制御している可能性を突き止めた。(Neurosci 2019)。さらに発達期の髄鞘形成に対する関与を検討したところ、FABP7KOマウスでは生後脊髄における髄鞘形成の遅延が起こることが明らかになった(Glia 2020)。2)アストロサイトの遺伝情報制御に対する脂肪酸代謝の機能を明らかにするため、FABP7KOマウスおよびアストロサイトの初代培養系を用いて、FABP7が特定の遺伝子発現をエピゲノミックに制御するかを検証した。その結果、カベオリン1プロモーター領域のヒストンアセチル化がFABP7発現と相関して変化していることが明らかになった(論文投稿中)。さらにグリア系悪性腫瘍である神経膠芽腫の増殖・浸潤がFABP7の発現量に依存して変化し、複数の遺伝情報がFABP7によるエピゲノム制御を受けている可能性を突き止めた(論文準備中)。
2: おおむね順調に進展している
発達期神経系対する脂肪酸栄養および機能発現の分子基盤解明に向けて、髄鞘形成や神経可塑性の検証が順調に進んだだけでなく、悪性グリオーマにおける脂肪酸代謝分子群の機能的意義について重要なヒントを得ることができた。脂肪酸コントロール食餌によるモデル作成も当初の予定以上に順調に進んでおり、次年度以降、成果が見込める可能性が高い。
引き続き、脂肪酸コントロール食餌で飼育した複数ラインのマウスモデル解析を中心に研究を進める予定である。特に脂肪酸種によって神経系細胞のエピゲノム修飾がどのように変化するか、について検証する予定である。さらに悪性腫瘍の増殖・浸潤に対する脂肪酸の影響については、移植モデルやヒト検体を用いた検討を加えるべく、準備を進めている。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)
Glia
巻: 印刷中 ページ: -
doi: 10.1002/glia.23789.
Neurosci Res
巻: 印刷中 ページ: -
doi: 10.1016/j.neures.2019.10.007.
Nephrol Dial Transplant
巻: 35 ページ: 250-264
doi: 10.1093/ndt/gfz 126..
Neurosci
巻: 409 ページ: 120-129
doi: 10.1016/j.neuroscience.2019.03.050. Epub 2019 Apr 30.