研究課題/領域番号 |
19H04027
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
大西 浩史 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (70334125)
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研究分担者 |
山崎 恒夫 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (80200658)
林 邦彦 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (80282408)
橋本 美穂 九州保健福祉大学, 薬学部, 准教授 (90381087)
林 由里子 群馬パース大学, 保健科学部, 講師 (90737438)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ミクログリア / 老化 / 脳 / 運動学習 |
研究実績の概要 |
前年度、自然老化後のマウスについて、ローターロッドテストによる協調運動学習能力を評価し、野生型マウス(コントロール)は老化によって運動学習がほぼ確認できなくなる一方、ミクログリアで膜型分子SIRPαを欠損させた遺伝子改変マウスは老化後も運動学習能力が維持されることを見出していた。このミクログリアSIRPα欠損マウスが示す抗老化表現型のメカニズムに迫るために、前年度から引き続き、行動解析後の老化野生型(コントロール)マウスおよび老化遺伝子改変マウスから調製した脳サンプルを用いて組織化学的解析、遺伝子発現解析を詳細に進めた結果、小脳においてみられる老化表現型(リポフスチン蓄積、神経細胞死など)については、SIRPα欠損マウスで軽減する様子は認められず、ミクログリアSIRPα欠損マウスの抗老化表現型の原因として、小脳における老化抑制の可能性を示す結果は得られなかった。一方で、発現遺伝子のアレイ解析や定量的PCR解析の結果、小脳組織でGPNMBやTREM2の増加が認められた。GPNMBは神経変性に対する保護的作用が報告されており、TREM2は保護的ミクログリア誘導のキーファクターとされることから、これらがミクログリアSIRPα欠損マウスの抗老化表現型と関係する可能性が考えられる。 老化がリスク因子となるアルツハイマー病(AD)のモデルマウスでSIRPαを欠損したマウスを作製し、基本的な活動性や概日リズムの評価をおこなったが、AD原因遺伝子変異やSIRPα欠損による明らかな影響は認められなかった。また、組織化学的解析を行ったが、SIRPα欠損マウスにおいて、脳内のβアミロイド蓄積や、その周囲におけるミクログリア活性化について、コントロールマウスと比べて明らかな違いは認められなかった。今回の解析結果からSIRPα欠損ミクログリアがβアミロイド蓄積を積極的に抑制する作用は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SIRPα欠損マウスの抗老化表現型の原因として小脳の老化抑制を仮定したが、老化マウスの小脳の組織化学的解析の結果、この仮説では抗老化表現型を十分説明できないと結論した。また、SIRPα欠損によりアルツハイマー病モデル病態の軽減を予測したが、予想とは異なりβアミロイド蓄積に変化は見られなかった。これらの結果は予想とは異なるものであり、今後計画の一部は変更する必要があるため、やや遅れていると判断した。ただし、それぞれの疑問点にひとつの解を与えるものである点は意義のある結果であったといえる。また、TREM2やGPNMBをミクログリアの新たな抗老化因子候補とするとともに、SIRPαがTREM2の抑制制御因子となる可能性を新たに見出すことができている点でも一定の進展は得られている。
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今後の研究の推進方策 |
SIRPαによるTREM2発現抑制についてより詳細な解析を進め、このシグナルがミクログリア活性化制御に重要な役割を果たすことを明らかにする。 前脳白質での老化表現型を解析し、SIRPα欠損ミクログリアが与える影響を明らかにする。 老化型ミクログリアの細胞特性の分析、SIRPαシグナル構成分子の同定、ヒトSIRPα遺伝子解析を継続して進める。
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