研究課題/領域番号 |
19H04028
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
曽根 博仁 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30312846)
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研究分担者 |
加藤 公則 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (00303165)
藤原 和哉 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (10779341)
児玉 暁 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (50638781)
堀川 千嘉 新潟県立大学, 人間生活学部, 講師 (00734857)
山崎 達也 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00358889)
谷内 洋子 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 教授 (30642821)
赤澤 宏平 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (10175771)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ビッグデータ / 健康寿命 / 人工知能AI / 食事 / 運動 / 生活習慣病 / 糖尿病 / 学校保健 |
研究実績の概要 |
実績として多くの国際誌掲載原著論文が得られているので、そのうちいくつかを選んで紹介する。 わが国の透析導入原因疾患の第一位、成人失明原因の第二位を占めるのは糖尿病腎症、網膜症であり、いずれも糖尿病合併症である。しかし近年の医療レベル向上により、これら合併症の重症例の絶対発症率は以前よりは低下したため、従来型コホート研究では、重症例イベント数が十分確保できなくなっていた。このため、健康寿命に直結する最重要アウトカムは透析導入や失明であるにも関わらず、それらの代わりに腎症や網膜症そのものの発症を代替エンドポイントとして研究が進められてきた。今回の研究では、そのような代替エンドポイントでなく、健康寿命を終了させる重症合併症そのものをエンドポイントとする解析が可能となり、それらのリスク因子や基準値が解明された。 また、現在の多くの生活習慣病関連のガイドラインに示されている心血管リスク因子のコントロール目標(①LDL-C < 120mg/dl、②HbA1c < 7%、③BP <130/80 mmHg、④禁煙)の達成度と、冠動脈疾患リスクとの詳細な関係は、これまでわが国では十分に検討されていなかった。今回の研究でその詳細が明らかになり、糖尿病の有無にかかわらず、上記①~④のいずれか一つの目標を達成すると、冠動脈疾患リスクは約1/2に、二つ達成すると約1/4に、三つ達成すると約1/5まで低減していた。さらに、たとえ糖尿病患者であっても、上記の目標すべてを達成していれば、非糖尿病者と比較しても冠動脈疾患リスクの有意な上昇は見られないことも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実績として多くの国際誌掲載原著論文や多数の国際学会発表演題が得られていることからもわかる通り、本研究は順調に進行しており、分担研究者の他、多くの大学院生や博士後研究員(女性を含む)も協力しつつ解析および論文化が活発に進行している。 次年度も多くの診療・保健現場に役立つ科学的エビデンスを確立するための小プロジェクトが進行中である。進行進捗度は当初の予定通りであり、特に問題は生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
たとえば上記概要欄記載のような成果は、「たとえ糖尿病でも、基本的な治療や生活習慣改善をしっかり行えば合併症を起こさず、健康長寿が実現できること、そして努力をすればするほど、その程度に応じた効果が得られる」ことなど、国民の受診・治療意欲向上への啓発、医療者向けガイドラインへの収載、医療行政における注力点など、各方面で役立つエビデンスと言える。今後とも引き続き、このような“現場に役立つ”科学的エビデンスを確立することに重点をおいてテーマ設定を行い、データベース解析と論文化をこれまで以上活発に加速させていく。さらにこのようなエビデンスは、地域・病院間の医療の質の均てん化にも寄与する他、個人別の健康寿命短縮イベント予測など医療個別化にも対応可能で、また構築されたデータベースはAI利活用の基盤にもなるため、その応用にも取り組み、さらなる医療ビッグデータの利活用普及と社会実装を実現したい。 今後、データベースのさらなる拡充も検討されており、異なるデータベース間の紐づけ突合などにより、これまでよりさらに深化した解析、あるいは視点を変えた解析も可能になることが期待されている。なお現在のところ、特に研究計画の変更もなく、研究を遂行する上での問題点もなく、計画通りに進行する予定である。
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