研究課題/領域番号 |
19H04031
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大日向 耕作 京都大学, 農学研究科, 准教授 (00361147)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 老化 / 加齢 / 動脈 / 血圧 / ジペプチド / 構造-活性相関 / CCK / NO |
研究実績の概要 |
生体は部分的な機能障害が原因で個体全体の機能不全に陥ることがないよう種々の情報伝達ネットワークを形成している。加齢により生体は恒常性が維持されている状態から、生理的老化、病的老化を経て老化関連疾患を発症し最終的に死に至ると考えられる。この老化の全体像を俯瞰するためには、このネットワークの変容や破綻を捉えることが不可欠である。本研究では包括的なペプチド利用により生体情報伝達ネットワークの加齢による変容解明を図ることを目標とする。
これまで我々は、様々なジペプチドの細胞や組織、個体における生理活性を検討し、培養細胞において微弱な応答性を示す一方、摘出した組織や個体レベルの検討では強力な生理活性を示すことを数多く報告してきた。すなわち、個体や組織に対してジペプチドは高い反応性を示すものと考えられ、優れたプローブとなることが期待される。また、ジペプチドの組み合わせは20×20=400種であり十分な多様性も併せ持つ。そこで、我々は、ジペプチドをプローブとして使用し、循環器系における加齢に着目し、情報伝達ネットワークの老化による変容を検討した。具体的には、336種類のジペプチドライブラリーを用いて、高血圧発症前期および後期の高血圧自然発症ラット(SHR)から摘出した腸間膜動脈のペプチド反応性を検討した。その結果、加齢により動脈弛緩反応を増強するジペプチドと減弱するジペプチドが存在することが判明した。それらのペプチドを用いて作用機構を検討したところ、高血圧発症前期では、一酸化窒素(NO)が、後期ではコレシストキニン(CCK)が、主要なメディエーターとして機能することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジペプチドライブラリーを用いた包括的な検討により加齢による血管機能の質的な変化を解明したことから、研究は順調に進んでいるといえる。CCK活性化分子は、加齢により反応性が低下した血管においても十分な効果が期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
既にCCK系を活性化するペプチド候補が得られている。さらに高血圧発症後期の摘出血管を用いて反応性や作用機構を解明する。また、神経系における加齢の影響についてジペプチドライブラリーを用いて検討する予定。
|