研究課題/領域番号 |
19H04033
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
下川 功 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (70187475)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カロリー制限 / 老化 / マクロファージ / FoxO転写因子 |
研究実績の概要 |
1)マクロファージを含む骨髄球系細胞特異的Foxo1およびFoxo3遺伝子欠失(LysM/Foxo1-/-, LysM/Foxo3-/-)マウスの作製:LysM-CreマウスとFoxo1(fl/fl)、Foxo3(fl/fl)マウスを交配し、コンディショナルマウスを作成した。LysM/Foxo1-/-マウスの寿命集団を確立し、寿命研究を開始した。 2)Inflammasomeのアッセイ系の確立:マウスの腹腔内マクロファージを常法に従って採取し、培養系に移した。Lipopolysaccharide (LPS)でプライミングし、ATPでinflammasomeを活性化し、マクロファージの抽出物におけるpro-interleukin (IL)-1b, pro-caspase-1および培養上澄における活性化型IL-1b、caspase-1を定量することによって、プライミングの効率とinflammasomeの活性化を評価するアッセイ系を確立した。このアッセイ系を用いて、LysM/Foxo1-/-マクロファージでは、inflammasomeの活性化が減弱すること、カロリー制限(CR)マウスから採取したマクロファージでもinflammasomeの活性化が自由摂食マウス(AL)マクロファージに比べ、減弱することを明らかにした。これらの結果から、CRの抗老化効果におけるマクロファージのFoxO1, 3の役割を検討する基盤が確立された。 3)ストレス応答:LysM/Foxo1-/-マウスにLPSを投与し、生存率を計測した。対照マウスに比べ、LysM/Foxo1-/-マウスの生存率は高かった。この結果は、2)のマクロファージのinflammasomeの活性減弱を反映していると推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)マクロファージを用いたinflammasome活性化のアッセイ系を確立した。このアッセイ系を用いて、カロリー制限マウスから採取したマクロファージと対照マウスからのマクロファージのinflammasome活性化に差異があることを予備的に確認した。生体から採取したマクロファージを培養系に移行し、解析することが可能であることを確認した。 2)LysM-CreマウスとFoxo1(fl/fl)、Foxo3(fl/fl)マウスを交配し、マクロファージおよび骨髄球性細胞特異的遺伝子欠失マウスを作製し、マウス実験集団を確立した。 3)マクロファージのinflammasome活性化とマウスのストレス耐性におけるFoxO1の役割が理論的に矛盾しない結果を示した。以上から、研究計画は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)LysM/Foxo3-/- マクロファージにおけるinflammasomeの活性化を評価する。 2)LysM/Foxo3-/-マウスの寿命集団を形成し、寿命研究を開始する。LysM/Foxo1-/-, Lysm/Foxo3-/-マウスの寿命研究集団の基本的データ(体重、摂食量、血中グルコース、インスリン濃度など)を収集する。 3)LysM/Foxo3-/-マウスのストレス応答を解析する。 4)LysM/Foxo1-/-, LysMFoxo3-/-マウスに発ガン剤を投与し、肝臓癌を誘導するモデルを用いて、肝細胞癌におけるマクロファージのFoxO転写因子の役割を、肝細胞特異的Foxo欠失マウスの結果と比較しつつ解析する。 5)LysM/Foxo1-/-, LysM/Foxo3-/-マクロファージのトランスクリプトーム解析を行い、inflammasome活性化にともなう分子経路の変化を解析する。
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