研究課題/領域番号 |
19H04034
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
近藤 茂忠 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 教授 (40304513)
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研究分担者 |
山岸 直子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40646840)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アピゲニン / エピガロカテキンガラート / 大腸がん / 分子標的薬 / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
本研究では、種々のがん分子標的薬に対して抵抗性(1次~3次耐性)を獲得した悪性化大腸がん細胞モデルを用いて、食品機能成分であるアピゲニンおよびエピガロカテキンガラートが分子標的薬マルチ耐性化を解除できることを明らかにする。さらに、その解除メカニズムを分子レベルで解明する。 2019年度は、現在耐性の出現が臨床的問題となっている6種類の分子標的薬(regorafenib、sunitinib、capmatinib, bevacizumab, erlotinib, afatinib)に対して耐性化を獲得した大腸がん細胞モデル(1次耐性モデル)および複数の分子標的薬に対して耐性化を獲得した悪性化大腸がん細胞モデル(2、3次耐性モデル)を樹立した。6種類の1次耐性細胞モデルを用いて検討した結果、アピゲニン、エピガロカテキンガラートともに分子標的薬1次耐性を抑制できることを明らかにした。次にcapmatinibに対する2次耐性モデルを用いて検討した結果、アピゲニンは2次耐性の原因となる細胞内シグナル伝達分子(p130Cas)の活性化を強く抑制し、エピガロカテキンガラートは2次耐性の原因となるバイパス経路分子(HGF受容体)の活性化を強く抑制した。その結果、アピゲニンとエピガロカテキンガラートを併用することでcapmatinibに対する2次耐性を完全に解除することができた。次にcapmatinibに対する3次耐性モデルを用いて検討した結果、アピゲニンは3次耐性の原因となるNRP1受容体とFAKの活性化を抑制し、エピガロカテキンガラートは3次耐性の原因となるEGF受容体を抑制することで、3次耐性を完全に解除することができた。一方、3次耐性原因分子群に対する分子標的薬を3剤併用しても3次耐性を完全に解除することはできなかった。以上の結果から、アピゲニン、エピガロカテキンガラートの併用の方が優れた抗腫瘍効果をもつことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に予定していた全ての解析が順調に終了したため。具体的には、6種類の分子標的薬(regorafenib、sunitinib、capmatinib, bevacizumab, erlotinib, afatinib)に対して耐性化を獲得した大腸がん細胞モデル(1次耐性モデル)を樹立し、その耐性化メカニズムに基づいてアピゲニンとエピガロカテキンガラートが1次耐性を抑制できることを明らかにできた。さらに、capmatinibに対する2次耐性モデルおよび3次耐性モデルの樹立に成功し、その耐性化メカニズムを明らかにすることができた。加えて、2次および3次耐性化メカニズムに基づいてアピゲニンとエピガロカテキンガラートがこれらの耐性化を抑制できることを明らかにできたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2019年度で新たに明らかにした2次耐性化(2種類のEGF-R分子標的薬erlotinibとafatinibに対する2次耐性化)と、capmatinibに対する4次耐性化についてその分子メカニズムを解明する。明らかにした耐性化責任分子群に対する食品由来機能成分(アピゲニンおよびエピガロカテキンガラート)の耐性化抑制効果について、種々の分子標的薬の抑制効果と比較検討する。さらに、アピゲニンによる抗悪性腫瘍作用の分子基盤を明らかにするため、アピゲニンが直接結合する分子標的薬耐性化の責任分子群を明らかにする。
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