研究実績の概要 |
本研究では、我々が樹立した、種々のがん分子標的薬に対して抵抗性(1次~4次耐性)を獲得した悪性化大腸がん細胞モデルを用いて、食品機能成分であるアピゲニンおよびエピガロカテキンガラートが分子標的薬マルチ耐性化を解除できることを明らかにする。さらに、その解除メカニズムを分子レベルで解明する。 2020年度は、現在薬剤耐性の出現が臨床的問題となっている2種類のEGF-R分子標的薬(erlotinibおよびafatinib)に対する2次耐性化の分子メカニズムを明らかにした。EGF-R分子標的薬耐性化細胞では、バイパス経路としてHGF-RおよびIGF-1Rが活性化しており、これら受容体がEGF-Rとヘテロ複合体を形成することでEGF-Rの再活性化を引き起こすことを明らかにした。 次に、HGF-R阻害薬+IGF-1R阻害薬併用に対する4次耐性化の責任分子がEGF-RおよびHER2であることを明らかにした。EGF-RおよびHER2がHGF-R、IGF-1Rとヘテロ複合体を形成することでこれら受容体の再活性化を誘導し、4次耐性化を惹起することを見いだした。 次に、エピガロカテキンガラートによる分子標的薬マルチ耐性化抑制のメカニズムを検討した。その結果、エピガロカテキンガラートはバイパス経路として重要なEGF-R, HER2, HGF-R,IGF-1Rの活性化を強く抑制することを見いだした。次に、アピゲニンによる分子標的薬マルチ耐性化抑制の分子メカニズムを明らかにするために、アピゲニンが結合する標的分子の探索を行った。その結果、アピゲニンはEGF-R, HGF-R, Akt, Raf1と結合し、これらキナーゼの活性化を強く抑制することを見いだした。
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