研究実績の概要 |
本研究では、我々が独自に樹立したがん分子標的薬に対して種々の抵抗性を獲得した悪性化大腸がん細胞モデルを用いて、分子標的薬耐性化の分子メカニズムを明らかにする。解明した耐性化機序に基づき、食品機能成分(エピガロカテキンガラート及びアピゲニン)が分子標的薬マルチ耐性化を解除できること、およびマルチ耐性化解除の分子基盤を解明する。 2021年度は、エピガロカテキンガラートによる分子標的薬マルチ耐性化抑制の分子メカニズムを明らかにするために、エピガロカテキンガラートが結合するがん悪性化関連標的分子の探索を行った。その結果、エピガロカテキンガラートはEGF-R, HGF-R, Raf1, MEK1/2, ERK1/2と結合し、これらキナーゼの活性化を抑制することを見いだした。 次に、分子標的薬(EGF-R阻害薬、HGF-R阻害薬、IGF-1R阻害薬)に対する耐性化の連鎖をアピゲニンとエピガロカテキンガラートが抑止できるかどうか検討した結果、分子標的薬マルチ耐性化を抑制できることを明らかにした。さらにその機序として、大腸がん細胞が各分子標的薬を回避するのに用いているバイパス経路分子群をアピゲニンおよびエピガロカテキンガラートが直接阻害していることを見出した。 次に、アピゲニンおよびエピガロカテキンガラートによる標的分子群の活性化抑制効果が長期間持続するかどうかを検討した。アピゲニンによる標的分子群の活性化抑制効果は1か月、エピガロカテキンガラートによる抑制効果は2か月、これら2つのフラボノイド併用による抑制効果は2か月程度となり、従来の分子標的薬併用による抑制期間よりも長期間持続することを明らかにした。しかしながら、アピゲニンとエピガロカテキンガラート(単剤および併用処理)による抑制効果は2か月以上経過すると減弱し、消失してしまうことが明らかとなった。
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